知的障害のある人にスポーツの機会を提供する国際組織「スペシャルオリンピックス」(SO)。1960年代に米国で活動が始まり、現在は世界170カ国以上で約400万人のアスリート(競技参加者)が自らの可能性に挑戦している。日本でも94年に国内本部が発足し、多くの自治体が活動を続けている。県内でも4月、雲南市を中心に地区組織が設立され、「誰もが自由にスポーツを楽しめる社会」を目指した取り組みが始まった。【金志尚】
県内では12年から地区組織の創設に向けた準備が進められてきた。練習会やコーチを対象にした研修(コーチクリニック)を重ね、昨秋には水泳、バスケット、陸上の3種目で初めて競技会も開かれた。
国内本部のSO日本(SON)もこうした取り組みを評価し、全国42番目となる地区組織の設立を認めた。会長には、準備段階から関わった雲南市の速水雄一市長が就任し、4月に認証式があった。
マラソンの五輪メダリストで、SON理事長の有森裕子さんも出席。「人間はチャンスさえあれば、どうにでも変わっていける。社会に広がっていくためのムーブメントを起こしたい」と訴えた。
SOは、年齢や性別、競技能力に応じてクラス分けするため、予選落ちはなく、参加者全員が決勝で戦う。誰にでも出場のチャンスがあり、全員にメダルやリボンが授与される。障害があっても参加することが喜びや達成感につながり、可能性も広がる。
現在、地区組織に登録している県内のアスリートは6歳から40歳までの36人。コーチを含めた約80人のボランティアが支えている。練習会では、アスリートの家族も一緒になって体を動かすことも多い。
松江市の柿木修さん(42)は、障害のある中学3年の長男、篤さん(14)と2年ほど前から練習に参加。4月にあったバスケットの練習会では、篤さんの妹、あかねさん(10)も汗を流した。
コーチクリニックも受けた柿木さんは「(長男は)ボランティアや他の家族に『ありがとうございました。またよろしくお願いします』と自分から言うようになった。格段に変わった」と話す。あかねさんに誘われて来た友人の持田かのんさん(10)も「障害を持っている人が身近になった」と意識の変化を語る。
一方、練習会に初めて参加した小学6年の安部昴君(11)は、周囲にうまく溶け込めないようだった。参加者に突然ボールを投げつけることもあり、父和善さん(43)は「ちゃんとなじめるか不安です」と打ち明けた。
そんな親子に、地区組織の藤原秀晶・ボランティア委員長は「みんな大なり小なり、同じようなことをした。彼もできるようになる。大丈夫」と話す。時間をかけて向き合うことで参加者は確実に変わっていくという。
自らボランティアとして関わる藤原さんは「あの子がこんなことをできるようになったんだ、と成長していく姿を見ると、こちらも何かを与えてもらう気になる」と言う。
今年11月には福岡県でSO全国大会が予定されている。島根県には4人の参加枠が与えられ、5月末から出雲市内で合宿もある。障害があっても親と離れ、みんなと過ごすことができるかどうか。SOは、そんな子供の自立を促すことも目指している。
毎日新聞 2014年05月03日 地方版
県内では12年から地区組織の創設に向けた準備が進められてきた。練習会やコーチを対象にした研修(コーチクリニック)を重ね、昨秋には水泳、バスケット、陸上の3種目で初めて競技会も開かれた。
国内本部のSO日本(SON)もこうした取り組みを評価し、全国42番目となる地区組織の設立を認めた。会長には、準備段階から関わった雲南市の速水雄一市長が就任し、4月に認証式があった。
マラソンの五輪メダリストで、SON理事長の有森裕子さんも出席。「人間はチャンスさえあれば、どうにでも変わっていける。社会に広がっていくためのムーブメントを起こしたい」と訴えた。
SOは、年齢や性別、競技能力に応じてクラス分けするため、予選落ちはなく、参加者全員が決勝で戦う。誰にでも出場のチャンスがあり、全員にメダルやリボンが授与される。障害があっても参加することが喜びや達成感につながり、可能性も広がる。
現在、地区組織に登録している県内のアスリートは6歳から40歳までの36人。コーチを含めた約80人のボランティアが支えている。練習会では、アスリートの家族も一緒になって体を動かすことも多い。
松江市の柿木修さん(42)は、障害のある中学3年の長男、篤さん(14)と2年ほど前から練習に参加。4月にあったバスケットの練習会では、篤さんの妹、あかねさん(10)も汗を流した。
コーチクリニックも受けた柿木さんは「(長男は)ボランティアや他の家族に『ありがとうございました。またよろしくお願いします』と自分から言うようになった。格段に変わった」と話す。あかねさんに誘われて来た友人の持田かのんさん(10)も「障害を持っている人が身近になった」と意識の変化を語る。
一方、練習会に初めて参加した小学6年の安部昴君(11)は、周囲にうまく溶け込めないようだった。参加者に突然ボールを投げつけることもあり、父和善さん(43)は「ちゃんとなじめるか不安です」と打ち明けた。
そんな親子に、地区組織の藤原秀晶・ボランティア委員長は「みんな大なり小なり、同じようなことをした。彼もできるようになる。大丈夫」と話す。時間をかけて向き合うことで参加者は確実に変わっていくという。
自らボランティアとして関わる藤原さんは「あの子がこんなことをできるようになったんだ、と成長していく姿を見ると、こちらも何かを与えてもらう気になる」と言う。
今年11月には福岡県でSO全国大会が予定されている。島根県には4人の参加枠が与えられ、5月末から出雲市内で合宿もある。障害があっても親と離れ、みんなと過ごすことができるかどうか。SOは、そんな子供の自立を促すことも目指している。
毎日新聞 2014年05月03日 地方版