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Channel: ゴエモンのつぶやき
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性的マイノリティーに世間は無理解 性同一性障害者特例法から10年

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 性別の変更を可能にした性同一性障害者特例法の施行から、今年7月で10年となる。当事者はどんな思いを抱えて生きるのか。同性愛者らを含むセクシュアルマイノリティー(性的少数者)の現状を見つめる。

「『自分』はやめろ。軍人じゃあるまいし」。福井県鯖江市に住む30代のヨシキ=仮名=は、高校時代に男性教諭から受けた言葉が胸に刺さっている。自分のことを「私」と呼べない理由があった。「僕」とも言えず、葛藤の末に「自分」を選んでいたのに―。「女なら『私』だろう」。教諭から簡単に一蹴された。

 心と体の性が一致しない性同一性障害者のヨシキは、小学校高学年から女性としての体に「何か違う」と感じた。男の子にときめくこともなかった。「大きくなれば治る」と願ったが違和感は膨らむ一方。高校に入ってインターネットの情報に触れ、障害なのだと悟った。

 当時、内緒でサラシを巻いていた。トイレは人けのない校舎隅の女子便所まで行った。修学旅行でも女友達と風呂に入らなかった。「仕方なく女性用の施設を使ったけど、女だと認めてしまうようでつらかった。せめて誰にも会わないようにして、『本当はここじゃない』と自分に言い聞かせていたんです」

 4年前に卵巣を摘出。「性同一性障害者特例法」に基づいて、性別を「女」から「男」に変えた。ホルモン注射の影響で無精ひげが伸び、今は見た目も男性。ただ、秘密は家族や幼なじみにしか明かしていない。事情を知った知人に「本当は女」と言いふらされ、差別を思い知った経験があるからだ。

 秘密を抱えている限り「どんなに仲良くなれても『この人をだましている』と胸が痛む」。その孤独さは「大人になった今でも変わらないんです」。

 当事者団体「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」(本部東京)が最高裁に依頼した調査では、国内の性別変更者は累計4353人(2013年末)。県内で変更を申し立てた人数(12年末)は17人で、北陸では石川の8人、富山の6人に対し突出している。

 テレビの影響もあって障害の存在自体は県内でも知られるようになった。しかし「いくら見聞きしても、実際に障害のある隣人はなかなか受け入れてくれない。世の中は無理解のまま」と同会の山本蘭代表は指摘する。

 越前市の20代のマイ=仮名=は心も体も女性で、愛するのも女性というレズビアン(女性同性愛者)。年上の彼女と付き合っているが、同居の両親にも同性愛のことは隠したままだ。

 高校時代に「女の子が好きなんて普通じゃない」と思い悩み、何も手に付かなくなった。「夕暮れになると橋から川を見下ろして自殺ばかり考えていた」時期もある。

 性同一性障害者なら性別を変えれば結婚できる。男性となった当事者と女性の夫婦が人工授精で子をもうけることも昨年末、最高裁が親子関係を認める初判断を示した。

 「それに比べて私たち同性愛者は、結婚も子を持つことも基本的にできない」とマイは肩を落とす。パートナーと一生連れ添っても「友人」だから、伴侶を亡くしたときの財産相続はない。「選択の余地なく不利な立場に追いやられる。好きな人がたまたま同性というだけなのに」

 性同一性障害者特例法とは 2004年7月に施行された。複数の精神科医の診断を得た上で、120歳以上2現在婚姻していない3未成年の子がいない4生殖腺がないか、生殖機能を永続的に欠く5変更先の性別に近似する性器の外観を備えている―の五つの要件を満たせば、家裁の審判により性別を変えられる。戸籍の記載と、民法など法令上の取り扱いが変更される。性同一性障害は、生物学的な性別と自らの性認識とが一致しない状態をいう医学的疾患名。原因は解明されていない。

福井新聞 2014年5月6日

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