長く荒れ果てていた東庄(とうのしょう)町笹川の須賀山城跡の本丸一帯を、近くの障害者支援施設「北総育成園」で暮らす知的障害者らが広場として整備し、山開きした。地域住民は「埋もれていた地元の歴史に光が当たる」と喜び、町おこしへの取り組みも始まった。
標高五〇メートルほどの小高い丘を登り始めてわずか五分。頂上部への最後の通り道は細く、落差のある空堀に囲まれ城の名残を残す。本丸跡は約三千平方メートル。周囲に林立する大木のわずかなすき間からは、広大な水田地帯が見渡せた。
須賀山城は十二世紀、中世の房総半島を支配した豪族の千葉氏一族に連なる東(とう)氏の初代当主胤頼(たねより)が居城とするため築いたと伝えられ、東庄の名前の由来になっている。
町は文化財としての重要性を認識し、二〇〇一年に城跡を示す看板を頂上部に立てた。ただ、私有地で人が立ち入れないこと、保護に必要な費用負担などから史跡指定を見送ってきた。
麓にある北総育成園は、城跡の中腹を借りて森を少しずつ切り開き、原木シイタケ栽培などをしてきた。手付かずだった頂上部の整備は、創立四十周年に合わせて発案した。
作業療法に位置付け二週に一度、利用者十三人と職員六人が弁当持参で丸一日山に入った。壁のように生い茂った高さ約三メートルの篠竹の伐採に挑み、一年余りで広場になった。
武井敏朗園長(64)は、「利用者にとって自然の中での作業は成果が分かりやすく励みになる。森があまりに手ごわく、くじけそうにもなったが、よくやれたと思う。地域貢献ができてよかった」と笑顔を見せた。
町の歴史を知り、感じてもらう場に−。施設側のそんな思いを受け止めた地主の男性も「自然が守られる形でなら、と快諾しました。おかげできれいになったので、多くの人に見てもらいたい」と満足げだ。
広場の整備は終わっていない。景観を楽しむための木立の間引きや、安全対策で柵などを設ける必要もある。このため、東庄郷土史研究会の会員らが「須賀山城址(じょうし)保存協力会」を設立し、花や木の植栽や案内板の設置を計画している。
平野剛会長(77)は「県内でも由緒ある城なのに、もったいないと思ってきた。山開きができたのは本当にありがたいこと。民間の力でさらに整備を進め、地域の歴史をPRできれば」と意気込む。
岩田利雄町長は「この場所は町民のよりどころになる。教育委員会にも現場を見てもらい、どう活用していくか町として考えていきたい」と話した。
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障害者らが苦労して切り開いた須賀山城跡の山開きを祝う関係者ら=東庄町笹川で
2014年6月1日 東京新聞
標高五〇メートルほどの小高い丘を登り始めてわずか五分。頂上部への最後の通り道は細く、落差のある空堀に囲まれ城の名残を残す。本丸跡は約三千平方メートル。周囲に林立する大木のわずかなすき間からは、広大な水田地帯が見渡せた。
須賀山城は十二世紀、中世の房総半島を支配した豪族の千葉氏一族に連なる東(とう)氏の初代当主胤頼(たねより)が居城とするため築いたと伝えられ、東庄の名前の由来になっている。
町は文化財としての重要性を認識し、二〇〇一年に城跡を示す看板を頂上部に立てた。ただ、私有地で人が立ち入れないこと、保護に必要な費用負担などから史跡指定を見送ってきた。
麓にある北総育成園は、城跡の中腹を借りて森を少しずつ切り開き、原木シイタケ栽培などをしてきた。手付かずだった頂上部の整備は、創立四十周年に合わせて発案した。
作業療法に位置付け二週に一度、利用者十三人と職員六人が弁当持参で丸一日山に入った。壁のように生い茂った高さ約三メートルの篠竹の伐採に挑み、一年余りで広場になった。
武井敏朗園長(64)は、「利用者にとって自然の中での作業は成果が分かりやすく励みになる。森があまりに手ごわく、くじけそうにもなったが、よくやれたと思う。地域貢献ができてよかった」と笑顔を見せた。
町の歴史を知り、感じてもらう場に−。施設側のそんな思いを受け止めた地主の男性も「自然が守られる形でなら、と快諾しました。おかげできれいになったので、多くの人に見てもらいたい」と満足げだ。
広場の整備は終わっていない。景観を楽しむための木立の間引きや、安全対策で柵などを設ける必要もある。このため、東庄郷土史研究会の会員らが「須賀山城址(じょうし)保存協力会」を設立し、花や木の植栽や案内板の設置を計画している。
平野剛会長(77)は「県内でも由緒ある城なのに、もったいないと思ってきた。山開きができたのは本当にありがたいこと。民間の力でさらに整備を進め、地域の歴史をPRできれば」と意気込む。
岩田利雄町長は「この場所は町民のよりどころになる。教育委員会にも現場を見てもらい、どう活用していくか町として考えていきたい」と話した。
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障害者らが苦労して切り開いた須賀山城跡の山開きを祝う関係者ら=東庄町笹川で
2014年6月1日 東京新聞