【千種辰弥】草津、野洲両市にある重症心身障害児・者施設「びわこ学園」への特別加算費=KM=の負担をめぐる県と市長会の対立が1年経った今も続いている。県は妥協案として18歳以上の入所者の加算費について市町に負担を求める代わりに、通所施設への市町の補助を半額分肩代わりする新制度を提案したが、市長会は拒否。不毛な対立に施設側は困惑を深めている。
大津市内で5日開かれた県市行政会議。近江八幡市の冨士谷英正市長は、4月の児童福祉法と障害者自立支援法の改正で、18歳以上の給付の主体が県から市町に移管されたことを理由に、県が加算費の半額負担を市町に求めていることを改めて批判。「特別加算は県が独自に設けた制度。負担を求めるのは理不尽だ」とした。
これに対し、県健康福祉部の渡辺光春部長は、市町が独自に行う通所施設への加算費を県が半額補助する新制度について、在宅の重症心身障害児者の福祉の向上につながると力説し、「給付決定の主体が市町に代わった事実もある。あくまで政策的に重症児者の福祉をどうするのかという話だ」と反論し、議論は平行線をたどった。
特別加算費の負担をめぐる対立は昨年11月にさかのぼる。県が加算費を折半する案を示したところ、一部の市が反発。そこで県は通所施設への補助を提案したが、市長会側は全市町が新制度に同意しないうちに移行することに反対し、調整がつかないまま時間が過ぎていった。
県は今年10月16日、事態の打開を目指して、通所施設への補助を適用する基準を緩和するなどと一定の譲歩を示す一方、来年4月から新制度を導入することを通告。制度に参加しない市町には、3月31日以前の入所者の加算費は全額負担するものの、4月1日以降の入所者については負担しないとし、決断を迫った。だが、11月5日の会議でも結論は出なかった。
嘉田由紀子知事は13日の会見で、通所施設に対する補助は元々、市長会側からの要望を受け入れたもので、新制度は県と市町が共同で入所者と通所者の支援を手厚くするものだと強調。「1日も早く制度を動かしてほしいという人がいる中で、すべて(の市が)同じ方向を向かないと動けないという結論で残念だ」と話した。
長引く意見対立に、びわこ学園側も戸惑いを隠せない。松本哲事務局長は医療の進歩で重症児者が増加する一方で入所施設の定員が増えず、通所施設の利用者が増えている現状を指摘。「これから重症で高齢の在宅や通所の人が増える。将来的な市町の負担を考えると、今から県が関与する枠組みを作ったほうがいい」と語り、新制度の早期開始を切望した。
![]()
県市行政会議で意見を交わす嘉田由紀子知事と市長ら=5日、大津市内のホテル
朝日新聞-2012年11月26日15時26分
大津市内で5日開かれた県市行政会議。近江八幡市の冨士谷英正市長は、4月の児童福祉法と障害者自立支援法の改正で、18歳以上の給付の主体が県から市町に移管されたことを理由に、県が加算費の半額負担を市町に求めていることを改めて批判。「特別加算は県が独自に設けた制度。負担を求めるのは理不尽だ」とした。
これに対し、県健康福祉部の渡辺光春部長は、市町が独自に行う通所施設への加算費を県が半額補助する新制度について、在宅の重症心身障害児者の福祉の向上につながると力説し、「給付決定の主体が市町に代わった事実もある。あくまで政策的に重症児者の福祉をどうするのかという話だ」と反論し、議論は平行線をたどった。
特別加算費の負担をめぐる対立は昨年11月にさかのぼる。県が加算費を折半する案を示したところ、一部の市が反発。そこで県は通所施設への補助を提案したが、市長会側は全市町が新制度に同意しないうちに移行することに反対し、調整がつかないまま時間が過ぎていった。
県は今年10月16日、事態の打開を目指して、通所施設への補助を適用する基準を緩和するなどと一定の譲歩を示す一方、来年4月から新制度を導入することを通告。制度に参加しない市町には、3月31日以前の入所者の加算費は全額負担するものの、4月1日以降の入所者については負担しないとし、決断を迫った。だが、11月5日の会議でも結論は出なかった。
嘉田由紀子知事は13日の会見で、通所施設に対する補助は元々、市長会側からの要望を受け入れたもので、新制度は県と市町が共同で入所者と通所者の支援を手厚くするものだと強調。「1日も早く制度を動かしてほしいという人がいる中で、すべて(の市が)同じ方向を向かないと動けないという結論で残念だ」と話した。
長引く意見対立に、びわこ学園側も戸惑いを隠せない。松本哲事務局長は医療の進歩で重症児者が増加する一方で入所施設の定員が増えず、通所施設の利用者が増えている現状を指摘。「これから重症で高齢の在宅や通所の人が増える。将来的な市町の負担を考えると、今から県が関与する枠組みを作ったほうがいい」と語り、新制度の早期開始を切望した。

県市行政会議で意見を交わす嘉田由紀子知事と市長ら=5日、大津市内のホテル
朝日新聞-2012年11月26日15時26分