女性や外国人、障害者など多様な人材を生かすダイバーシティ(多様性)経営への関心が高まる中、リーダーに求める資質が変わろうとしている。従来の先頭に立って周囲を動かす「君臨・支配型」から、“異質”な人材の能力を引き出し、組織を活性させる「支援・奉仕型」リーダーへの移行だ。NPO法人(特定非営利活動法人)ユニバーサルイベント協会が主催する障害者らとのキャンプは、支援型リーダーを育てる試みとして注目されている。
キャンプで特性知る
「最初に目的を共有できたので、メンバーのやる気の維持を意識しながら、あれこれ指示せずに各自のやり方をサポートする形で全体を管理できた」
こう語るのは丹青社ストアエンジニアリング事業部の吉井ちよさん(32)。あるファストフードチェーンの店舗改装に、プロジェクトリーダーとして携わった。メンバーはベテランから未経験者まで、年齢も国籍も多様だったが、6月末の期限内に完了させた。
達成感たっぷりの吉井さんは「役立ったのがキャンプ。支援型リーダーシップを意識するようになった」と振り返る。
参加したのは、同協会が主催する企業研修「ユニバーサルキャンプin八丈島」。企業からの参加者には、多様な人材の力を引き出すリーダーシップを身につけるプログラムが用意されている。
キャンプでは、障害の有無、年齢、性別、国籍が異なる参加者が2泊3日をともに過ごし、テントの設営や食事作り、スポーツなどの協働作業を行う。夜になれば、店員も客も音声会話禁止のサイレント・バー、視覚障害者が運営するバー・イン・ザ・ダークなどでダイバーシティを実感する。
それぞれの違いを知り、特性を考えながら役割分担や工夫を凝らした連携でプログラムをやり遂げる。不便な環境だから互いに気づくという。
吉井さんが参加したのは2012年。チームは大学生から定年退職者まで年齢もさまざまで、その中に車いすの男性、聴覚と色覚の障害者がいた。障害者と濃密な時間を過ごすうちに「自分から『できない』を主張し、『できる、できない』をチームで共有する。できるふりは一番よくない」ことを知った。
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これを仕事に生かした。男性中心の工事現場を任されたが、「これまでの『やってください』から、『できる、できない』でメンバーを動かした」。みんなの背中を押す支援型リーダーに変わり、上司にも頼ることはなかった。
丹青社は05年の第1回キャンプから参加、延べ66人が研修を受けた。橋本俊朗取締役常務は「体験を通して得た気づきは、顧客とのコミュニケーションやプロジェクトの中でリーダーシップの発揮にいきている」とキャンプ効果を認める。 自律性引き出す
JR東日本のグループ会社、東日本トランスポーテックは第5回から企業研修として活用している。
最初に参加した車両事業部企画課の瀬尾正昭課長代理(40)は、キャンプでの活動を通じて支援型リーダーシップを学んだ。「契約やシステム、設備投資などの取りまとめが仕事だが、支店などの要望をできるだけ生かしながらまとめるのにキャンプでの研修成果を生かしている」と話す。
民間企業(従業員50人以上)で雇用されている障害者数は13年6月時点で40万人を突破、10年連続で過去最高を更新した。実雇用率(法定雇用率2.0%)は1.76%まで上昇した。
しかし、法定雇用率達成企業は42%にとどまる。それだけ障害者雇用の余地は残る。加えて18年4月からは精神障害者の雇用も義務づけられ、就労意欲の高い障害者の活躍の場は広がる。年下の女性が部長に昇格し、外国人が担当役員に就き、障害者と机を並べるのも当たり前の光景になりつつある。
障害者雇用など人材育成事業を手がけるUDジャパン(東京都港区)の内山早苗代表は「企業にとってダイバーシティへの対応が重要課題であり、クリアできる企業が生き残る。それだけに支援型リーダーの育成が重要になってくる」と説く。
NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会の真田茂人理事長は「環境変化が激しく顧客ニーズが高度化・多様化する今、成功体験を持ったリーダーの命令が正しいとはかぎらない」と指摘。その上で「リーダーは謙虚になって、部下のモチベーションと自律性を引き出し、正しい戦略を発見する必要がある」と話す。
2014.7.19 06:31 SankeiBiz
キャンプで特性知る
「最初に目的を共有できたので、メンバーのやる気の維持を意識しながら、あれこれ指示せずに各自のやり方をサポートする形で全体を管理できた」
こう語るのは丹青社ストアエンジニアリング事業部の吉井ちよさん(32)。あるファストフードチェーンの店舗改装に、プロジェクトリーダーとして携わった。メンバーはベテランから未経験者まで、年齢も国籍も多様だったが、6月末の期限内に完了させた。
達成感たっぷりの吉井さんは「役立ったのがキャンプ。支援型リーダーシップを意識するようになった」と振り返る。
参加したのは、同協会が主催する企業研修「ユニバーサルキャンプin八丈島」。企業からの参加者には、多様な人材の力を引き出すリーダーシップを身につけるプログラムが用意されている。
キャンプでは、障害の有無、年齢、性別、国籍が異なる参加者が2泊3日をともに過ごし、テントの設営や食事作り、スポーツなどの協働作業を行う。夜になれば、店員も客も音声会話禁止のサイレント・バー、視覚障害者が運営するバー・イン・ザ・ダークなどでダイバーシティを実感する。
それぞれの違いを知り、特性を考えながら役割分担や工夫を凝らした連携でプログラムをやり遂げる。不便な環境だから互いに気づくという。
吉井さんが参加したのは2012年。チームは大学生から定年退職者まで年齢もさまざまで、その中に車いすの男性、聴覚と色覚の障害者がいた。障害者と濃密な時間を過ごすうちに「自分から『できない』を主張し、『できる、できない』をチームで共有する。できるふりは一番よくない」ことを知った。

これを仕事に生かした。男性中心の工事現場を任されたが、「これまでの『やってください』から、『できる、できない』でメンバーを動かした」。みんなの背中を押す支援型リーダーに変わり、上司にも頼ることはなかった。
丹青社は05年の第1回キャンプから参加、延べ66人が研修を受けた。橋本俊朗取締役常務は「体験を通して得た気づきは、顧客とのコミュニケーションやプロジェクトの中でリーダーシップの発揮にいきている」とキャンプ効果を認める。 自律性引き出す
JR東日本のグループ会社、東日本トランスポーテックは第5回から企業研修として活用している。
最初に参加した車両事業部企画課の瀬尾正昭課長代理(40)は、キャンプでの活動を通じて支援型リーダーシップを学んだ。「契約やシステム、設備投資などの取りまとめが仕事だが、支店などの要望をできるだけ生かしながらまとめるのにキャンプでの研修成果を生かしている」と話す。
民間企業(従業員50人以上)で雇用されている障害者数は13年6月時点で40万人を突破、10年連続で過去最高を更新した。実雇用率(法定雇用率2.0%)は1.76%まで上昇した。
しかし、法定雇用率達成企業は42%にとどまる。それだけ障害者雇用の余地は残る。加えて18年4月からは精神障害者の雇用も義務づけられ、就労意欲の高い障害者の活躍の場は広がる。年下の女性が部長に昇格し、外国人が担当役員に就き、障害者と机を並べるのも当たり前の光景になりつつある。
障害者雇用など人材育成事業を手がけるUDジャパン(東京都港区)の内山早苗代表は「企業にとってダイバーシティへの対応が重要課題であり、クリアできる企業が生き残る。それだけに支援型リーダーの育成が重要になってくる」と説く。
NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会の真田茂人理事長は「環境変化が激しく顧客ニーズが高度化・多様化する今、成功体験を持ったリーダーの命令が正しいとはかぎらない」と指摘。その上で「リーダーは謙虚になって、部下のモチベーションと自律性を引き出し、正しい戦略を発見する必要がある」と話す。
2014.7.19 06:31 SankeiBiz