Quantcast
Channel: ゴエモンのつぶやき
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

性別変更の原告 入会拒否違法判決に安堵の涙

$
0
0
◆「普通の女性で暮らしたい」

 性別変更を理由とするゴルフクラブへの入会拒否は「違法だ」と司法が認めた。八日の静岡地裁浜松支部の判決に、性同一性障害で男性から女性に性別を変更した静岡県西部の会社経営の女性(59)は、安堵(あんど)の涙をこぼした。「私は普通の女性として暮らしたいだけ」。原告として提訴し、その思いが届いた判決だった。

 男性の体で生まれ、戸籍には男と記入された。でも、幼いころから女の子だと思い続けた。性同一性障害の診断を受けた今でこそ「脳は女性」と納得できるが、当時は誰にも打ち明けられなかった。

 思春期になると、体の変化に苦しみ、「自分は女性」との意識を遠ざけるようになった。二十六歳で女性と結婚。二児を授かり、三十一歳で自身の会社を立ち上げた。「男としてやっていける。周囲にも自分にも、それを証明しようと無理をしていた」と振り返る。

 三十九歳で妻を病気で亡くすと、喪失感もあり「男でいる理由がなくなった」と思うようになった。一九九八年に埼玉医科大で日本初の性別適合手術があったことをニュースで知り、初めて性同一性障害だと自覚した。

 「女性になれると一度思ったら、止まらなかった」。四十五歳でホルモン治療を始め、顔や体つきが女性らしくなってきた。二〇〇八年に性同一性障害者性別特例法が改正され、子どもが成人していれば性別を変更できるようになった。五十五歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性から女性に変更した。本当の自分に戻れた満足感があった。

 ゴルフクラブに入会を申し込んだのは、その一年半後。面接もせずに入会を拒んだクラブ側の対応に「性同一性障害者への偏見だ」と感じた。「入会拒否を認めれば、女性として平等に扱われる権利が侵害される」との危機感から提訴した。

 訴訟でクラブ側は、浴室などを使う際のほかの女性会員の困惑を入会拒否の理由の一つに挙げた。だが、誰が見ても女性の姿だ。「(そのゴルフ場を)ビジターとして利用し、浴室も使ったが、何の問題もなかった」

 勤務先や家庭で、偏見や無理解から居場所を失っている性同一性障害の仲間は多いという。「自殺を図ったり、精神的に追い込まれたりしていく人の割合が多い」。判決を受けて「性同一性障害への正しい理解が広がるきっかけになってほしい」と涙をふいた。

◆識者コメント「性同一性障害差別に踏み込む」

 GID(性同一性障害)学会理事長で岡山大大学院の中塚幹也教授(生殖医学)は「国も、性同一性障害者に手を差し伸べ、普通に暮らせる社会をつくろうと動いている」と指摘し、「判決は市民感覚として妥当で、当事者たちにとっては心強い」と評価した。

 静岡大の笹原恵教授(女性学)は「ゴルフクラブに入会できないことは原告の経済的な不利益だけでなく、人格を否定し、さらなる差別を助長しかねないと踏み込んだ。画期的な判決だ」との考えを示した。

 「性的少数者や障害者たちに社会が寛容になることが大切だ」と、立命館大の二宮周平教授(家族法)は力説した。「そうなっていけば、平等に扱われ、尊厳も守られていく。判決は当然の結論であり、安心している」と話した。

 人権問題に詳しい愛知県弁護士会の舟橋直昭弁護士は「疾患のある人が、その障害を自覚し、医学的救済を受けることは憲法一三条の『個人の尊厳原理』に基づくものと考えられている。今回の判決も、その流れをくんでいるといえる」と述べた。

2014年9月9日      中日新聞


Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>