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Channel: ゴエモンのつぶやき
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神奈川)障害者の命、銀輪で訴え ろう夫婦、被災地へ

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 災害時に防災無線が聞こえないなどのハンディがある障害者の存在をもっと知ってもらいたい。そんな思いで、14日に東北の被災地を走る自転車イベントに、ろうの夫婦が出場する。

 朝6時、港の見える丘公園(横浜市中区)。「Deaf Japan」と入った赤いユニホームの2人が自転車を降りると手話での会話が始まる。早瀬憲太郎さん(41)と久美さん(39)だ。宮城県石巻市を発着する「ツール・ド・東北」に備え、西区の自宅から約1時間かけて10以上の坂を上り下りする練習を重ねている。

 自転車は、耳の不自由な子どもたちが通う塾を経営する憲太郎さんの20年来の趣味。5年前、「頑張る姿を子どもたちに見せたい」と、ろう者のオリンピックであるデフリンピックを目指し、本格的に2人で競技を始めた。平日は出勤前と帰宅後に計2時間ほど練習する。休日は全国の大会に遠征し、昨年ブルガリアで行われたデフリンピックに出場。久美さんはマウンテンバイクの部門で銅メダルを獲得した。

 一方、東日本大震災後、多くの障害者が犠牲になっていたことを知った。国や自治体の統計をもとに、障害者団体「日本障害フォーラム」が推計したところ、障害者の死亡率は健常者の約2倍となった。宮城県では肢体不自由の次に聴覚障害者の死者が多く、防災無線が聞こえず避難しないまま津波にのまれた人もいたとみられる。震災の約1週間前に憲太郎さんが仕事で仙台市を訪れた際に出会ったろう者や通訳者の中にも死者がいた。

 震災当日、横浜市で歯医者の診療中だった憲太郎さん自身も、理不尽な思いをした。音声だけで避難指示があったらしく、目に乗せられていたタオルを取ると1人取り残されていた。腹が立ったものの、「誰にも悪気はなく、僕への伝達方法を知らなかっただけ。普段から関わりがなければ気づけない」と思い至った。

 映画制作の経験もある憲太郎さんは、日本障害フォーラムなどの依頼を受けて障害者の被災を追ったドキュメンタリー映画「生命(いのち)のことづけ」を監督。遺族のほか、助かったものの精神障害を理由に避難所で「出て行け」と怒鳴られた人や避難指示区域に5日間取り残された全盲の女性など様々な障害を抱える人を取材し、昨年公開した。

 震災時には、聴覚障害があっても普段から付き合いがある近所の人に津波が来ることを教えられ、逃げられた人もいたという。「例えば僕なら、避難指示を教えてもらえば車いすを押すなど助ける側に回れる。助かる命を増やすためには『自分とは違う存在がいる』と気づいてもらうことが大切」と憲太郎さん。

 映画と同様、ツール・ド・東北でも、出場することで他の参加者や沿道の人に障害者の存在を知ってもらいたいと願う。「大会に出ることで注目が集まり、僕らの存在や災害被害を減らしたい思いをより広めることができる」。そんな思いで、被災地を走る。

2014年9月11日03時00分    朝日新聞


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