元小学校教師の村上邦子さん(66)=東海村石神内宿=が作詞・作曲を指導する障害者向け音楽講座が今年、設立10年を迎えた。10月29日には東海村村松の村総合福祉センター絆で、2年ぶりとなる同講座2回目のミニコンサートを開催。村上さんは「彼らの作った曲は生きざまそのもの。多くの人に聞いてほしい」と来場を呼び掛けている。
音楽講座は1994年、日立市会瀬町の障害者向けの地域活動支援センター「ゆうあい」でスタート。村上さんは退職後の2004年、同施設に勤務していた知人に紹介され、引退した前任講師の後を引き継いだ。この10年間で同施設に通う計約7人を指導。現在は月1回、25〜48歳の障害者5人に作詞・作曲を指導している。
受講生は、先天性の脳性まひや交通事故による半身不随などの障害がある。村上さんは受講生が簡単に作曲できるよう、1小節に13パターンのリズムを書いた「リズム表」を作製。受講生は先に作っていた詩に合うリズムを選んだ後、村上さんと音程を付けていく。
作詞・作曲の技法を知らなかった村上さんは10冊の指南書を読んで勉強。「何から教えればよいのか分からなかったが、『音楽は作る人にも、聞く人にも寄り添ったものであればよい』と読み、基礎・基本に忠実でなくても良いことに気付いた」。自由な指導法を心がけ、当初は完成まで1年ほどかかった作業も、今では最短3カ月で完成することもあるという。
左半身不随の受講生、桜井敏幸さん(44)=日立市=は自作の「君は…」がミニコンサートで演奏される。桜井さんは「障害を抱えていると、できることが健常者より少ない。音楽では、『悲しい』や『つらい』という言葉で足りない思いを自由に残すことができる」と作詞・作曲の楽しさを指摘した。
コンサートは午後0時半スタート。日立市内のボランティアが演奏し、計6曲を披露する。村上さんは「恋愛や親への感謝の気持ちなど、健常者では描けない表現があり、ハッとさせられることもある。音楽を通して、障害者と健常者が一体になる空間を作りたい」と話した。問い合わせは029・283・2299(東海村総合福祉センター絆)。
毎日新聞 2014年09月23日 地方版