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累犯障害者にどう向き合う

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 検察トップの小津博司検事総長(63)が5日、累犯障害者の支援に先駆的に取り組む社会福祉法人南高愛隣会(雲仙市、田島良昭理事長)の更生施設を視察した。長崎では、罪を繰り返す「累犯障害者」の再犯防止に向け、検察捜査に福祉の視点を取り入れる実験的な試みが進む。累犯障害者の問題に検察はどう向き合うのか。小津検事総長に聞いた。

 −南高愛隣会の更生施設を視察した感想を。

 日本の犯罪件数は終戦直後からは減少傾向だったが、平成に入って徐々に増え、体感治安の悪化が指摘されるようになった。検察としても再犯防止は当然やらないといけないと考えていた。そんな時、刑務所の中にいる障害者の社会復帰に関し福祉の方から動きが出てきた。今回初めて現場を見せてもらってすごいなと思ったし、更生の場としての可能性を感じた。

 −検察トップとして累犯障害者問題への認識は。

 検察がこの問題に目を向けたきっかけは二つ。一つは刑の一部執行猶予制度。この制度が始まれば、裁判官も、検察官も「被告にとってどんな社会内処遇がふさわしいか」と責任を持って判断しなければならなくなる。

 もう一つが検察改革だ。大阪地検の事件の後につくった「検察の理念」(検察の基本姿勢を示した10カ条の倫理規定)の前文には、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。我々が目指すのは事案の真相に見合った、国民の良識にかなう、相応の処分、相応の科刑の実現である」とある。

 当たり前のことを書いているのだが、検察の姿勢としては大きな転換。被疑者や被告について「なるべく長い期間刑務所に入れて」と主張するのではなく、そもそも「刑務所に入れた方がいいのか」「刑務所に入れたとして、その後どう更生を図るか」と視野を広げなくてはならない。検察は今、ようやくそんな問題意識にたどり着いた。そうした過程で累犯障害者の問題に目を向け始めた。

 −長崎では、検察と福祉による「新長崎モデル」が進む。あくまで「実験」で終わるのか、それとも全国に広がっていくか。

 南高愛隣会の存在があるからこそ、長崎では先進的な取り組みができている。そのまま全国に広げるのは難しい。しかし、累犯障害者の支援を「やらなければならない」「こういう形でなら自分のところでもできる」という姿勢は広がっていくはず。自分たちができることを自分たちなりにやっていくことが大切。それは検察も同じ。そういう意味では、全国に広げていかなければならない。

【略歴】おづ・ひろし 1949年生まれ。三重県出身。東京大卒。74年東京地検検事任官。法務省刑事局長、法務事務次官、東京高検検事長などを歴任し、今年7月から現職。趣味は野山散策。


「検察も視野を広げなければならない」と語る小津検事総長=大村市内

(2012年12月25日更新) 長崎新聞

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