県内の各自治体が実施している障害者向けのおむつ支給事業で、手続きや確認方法の不備があり、本来全額障害者に役立てられるべき財源の一部が、薬局などの業者に流出している可能性があることが7日、分かった。神奈川新聞社の取材に、県内の複数の自治体は「不十分な手続き。実態を調査する」と回答。横浜市や川崎市は近く、業者への聞き取りなどを行う方針だ。
問題となっているのは、障害者向けの日常生活用具支給事業の「紙おむつ支給事業」。大半の自治体で、1人当たりの月額補助の上限額を1万2千円程度として実施している。自治体から支給決定を受けた利用者(障害者)に、業者がおむつを納品し、3カ月から1年分をまとめて自治体へ請求する。
しかし、利用者側へ実際に納品した総額が上限額に満たない場合でも、業者は上限額いっぱいの請求が可能で、実際、大半の業者へ上限額の総額が振り込まれていた。
年間2億円余りを同事業で支出している横浜市の担当者は「納品額と、業者からの請求額に差額があったとしても、現状の手続きでは確認できない」とした上で、現状を調査する方針を決めた。
すでに薬局などの店舗へ立ち入り調査をした藤沢市障害福祉課によると、利用者数ベースで約4割に繰越金があったことが判明。このほか納品伝票にサインがなかったり、伝票自体が保管されていないケースもあったという。
神奈川新聞社が県内の複数自治体に問い合わせたところ、手続きについて「不十分」「不備がある可能性がある」などと回答。見直しに向け実態を調査するとしている。同事業は全国的に実施され、類似の手続きで支給されている。
◆「善意任せが現状」
「実際に満額1万2千円を使っている人の方が少ないはず」。おむつ支給事業を利用する、身体障害のある長男(4)を持つ父親(43)=藤沢市=はそう話す。「だいたい1カ月に4千円程度で済んでいる。うちの場合は、決まった商品を持ってきている。特にサインは求められない」という。
自治体は、業者からの請求の際、利用者の署名と押印のある「給付券」添付を義務付けている。だが、この給付券には「品名・紙おむつ」「金額・1万2千円」「数量・6カ月分」などと、具体性に欠ける内容しか記載されていない。
同制度で障害者へおむつを納品しているという県内の複数の薬局経営者は「繰越金はある」と明かす。
ただ、繰越金の金額がどの程度なのかを把握する仕組みはなく、県内の自治体担当者は「業者や利用者の善意に任せているのが現状。実際にどのブランドのおむつがどれだけ納品されたのかを詳細に把握できていない。業者側が(繰越金を)隠そうと思えば隠せる」と手続きの不備を認めている。
一方で「『月額1万2千円では、足りない』という声もある」と複数の自治体担当者は話す。適切な納品管理と請求手続きがなされれば「同額の財源で、足りない障害者へも十分おむつが行き渡る可能性がある」としている。薬局側も「仮に手間が増えたとしても、チェック体制を整えなければ、真面目な業者とそうでない業者の間で、公平性を維持できない。見直すべき」と話している。
かながわ市民オンブズマンの代表幹事・大川隆司弁護士は「障害者のために使われるべき公金の一部が薬局に流れているなら、補助金適正化法の趣旨に反し、違法な手続きの可能性がある」と指摘する。
同制度の問題を取り上げてきた藤沢市の友田宗也市議(みんなの党藤沢)は、「実際の納品をチェックできないのは、ずさんな会計処理。全国の自治体が同様の仕組みで実施しているとみられ、問題は大きい」としている。
カナロコ(神奈川新聞)-2013年1月8日
問題となっているのは、障害者向けの日常生活用具支給事業の「紙おむつ支給事業」。大半の自治体で、1人当たりの月額補助の上限額を1万2千円程度として実施している。自治体から支給決定を受けた利用者(障害者)に、業者がおむつを納品し、3カ月から1年分をまとめて自治体へ請求する。
しかし、利用者側へ実際に納品した総額が上限額に満たない場合でも、業者は上限額いっぱいの請求が可能で、実際、大半の業者へ上限額の総額が振り込まれていた。
年間2億円余りを同事業で支出している横浜市の担当者は「納品額と、業者からの請求額に差額があったとしても、現状の手続きでは確認できない」とした上で、現状を調査する方針を決めた。
すでに薬局などの店舗へ立ち入り調査をした藤沢市障害福祉課によると、利用者数ベースで約4割に繰越金があったことが判明。このほか納品伝票にサインがなかったり、伝票自体が保管されていないケースもあったという。
神奈川新聞社が県内の複数自治体に問い合わせたところ、手続きについて「不十分」「不備がある可能性がある」などと回答。見直しに向け実態を調査するとしている。同事業は全国的に実施され、類似の手続きで支給されている。
◆「善意任せが現状」
「実際に満額1万2千円を使っている人の方が少ないはず」。おむつ支給事業を利用する、身体障害のある長男(4)を持つ父親(43)=藤沢市=はそう話す。「だいたい1カ月に4千円程度で済んでいる。うちの場合は、決まった商品を持ってきている。特にサインは求められない」という。
自治体は、業者からの請求の際、利用者の署名と押印のある「給付券」添付を義務付けている。だが、この給付券には「品名・紙おむつ」「金額・1万2千円」「数量・6カ月分」などと、具体性に欠ける内容しか記載されていない。
同制度で障害者へおむつを納品しているという県内の複数の薬局経営者は「繰越金はある」と明かす。
ただ、繰越金の金額がどの程度なのかを把握する仕組みはなく、県内の自治体担当者は「業者や利用者の善意に任せているのが現状。実際にどのブランドのおむつがどれだけ納品されたのかを詳細に把握できていない。業者側が(繰越金を)隠そうと思えば隠せる」と手続きの不備を認めている。
一方で「『月額1万2千円では、足りない』という声もある」と複数の自治体担当者は話す。適切な納品管理と請求手続きがなされれば「同額の財源で、足りない障害者へも十分おむつが行き渡る可能性がある」としている。薬局側も「仮に手間が増えたとしても、チェック体制を整えなければ、真面目な業者とそうでない業者の間で、公平性を維持できない。見直すべき」と話している。
かながわ市民オンブズマンの代表幹事・大川隆司弁護士は「障害者のために使われるべき公金の一部が薬局に流れているなら、補助金適正化法の趣旨に反し、違法な手続きの可能性がある」と指摘する。
同制度の問題を取り上げてきた藤沢市の友田宗也市議(みんなの党藤沢)は、「実際の納品をチェックできないのは、ずさんな会計処理。全国の自治体が同様の仕組みで実施しているとみられ、問題は大きい」としている。
カナロコ(神奈川新聞)-2013年1月8日