14日は成人の日。障害を持った若者たちも20歳の門出を祝う。施設で、母校で、恩師や友人との再会を喜び合う。これまで成長してくれた安堵(あんど)感や感謝、療育時の苦悩…見守る家族にも、さまざまな思いが去来する。
佐賀市の生活介護事業所「響」では、知的・重複障害の6人が成人を迎える。介助を受けレクリエーションを楽しむだけでなく、本人ができる範囲で生産活動に挑戦。社会とのつながりを実感している。
新成人となるのは荒川真綾さん(20)、緒方歩さん(20)、高祖大樹さん(20)、末次正昂さん(19)、三ケ島直美さん(20)、松永匡平さん(20)。全員、佐賀市の自宅から週に数回、午前10時から午後3時半まで通っている。
脳性まひや知的障害、足の変形、食道閉鎖などハンディはさまざまだが、全員が午前中は生産活動に携わる。幼稚園や市役所などに配達する乾燥プルーンを数えて袋に詰める作業。自分ができることで、社会に貢献する喜びを感じ取っている。
早産などで新生児集中治療室に入り、気管切開や胃ろうの手術、けいれんを抑える薬の服用など治療を続けてきた彼らにとって、意思表示や体を動かす力は、幼児期から特別支援学校などで訓練してきた成果でもある。
6人には10日、一足早く市肢体不自由児者父母の会から花束が贈られた。たん吸引など24時間看護が必要な長女を育てる母親は「同じ障害の仲間が早くに亡くなり、常に覚悟してきた。成人式を迎えてくれて、ここ数日、涙が止まらない」。「仮死状態で生まれて脳性まひになり、1歳半で座ることすらできなかった子が、こんなに成長して」と孫のスーツ姿に言葉を詰まらせる祖母の姿もあった。
同事業所で毎年、新成人のために開いてきた「お祝い会」も、今年は例年になく人数が多いことから、市内の式場を借りて20日に開く。特別支援学校の恩師も駆けつけてくれる予定で、宮原里美施設長は「どんなに喜んでくれるか、職員も楽しみ」と語る。
■大人の自覚、就職目指す
佐賀市の久保田亮さん(19)は、同市の障害者就労移行支援事業所「ジョブサポートそら」に通いながら一般企業への就職を目指している。成人式を間近に控え、苦手だった人前での意思表示ができるようになり「大人として頑張っていきたい」と意欲を語る。
1歳で熱性けいれんのため知的障害となった。地元の小中学校、大和特別支援学校高等部を経て、一昨年から就労支援を受けている。
就労訓練は週6回、午前8時から午後5時まで。人前で緊張する性格のため、当初は指示された作業を無言でこなすだけだったが、一緒に訓練を受ける仲間の影響を受け、少しずつ言葉が出るようになった。
昨夏には建設会社の職場を体験。有明海の漂流物の撤去作業に取り組み、自信をつけた。指導に当たる鴨川隆史主任は「肥料工場での現場実習を自ら申し出るなど自発性が急に芽生えてきた。まじめに作業する責任感の強さも武器」と成長ぶりを語る。
13日の佐賀市の成人式には、慣れないネクタイの締め方を父から教わり、姉が髪を整えてくれるなど、家族総出で準備する。母親の真弓さんは「やっとここまでこれた。使命感が強くて無理し過ぎる性格の子だけに、働く意義や暮らす楽しさを丹念に教えてくれる施設に感謝している」と目を細めた。
花束を受け取り喜ぶ新成人。前列は、右から三ヶ島さん、高祖さん、松永さん。後列は、右から緒方さん、末次さん、荒川さん=佐賀市の生活介護事業所「響」
鴨川主任(左)から指導を受ける久保田さん。生活するための収入や働き方も丁寧に説明を受けていた=佐賀市のジョブサポートそら
佐賀新聞-2013年01月13日更新
佐賀市の生活介護事業所「響」では、知的・重複障害の6人が成人を迎える。介助を受けレクリエーションを楽しむだけでなく、本人ができる範囲で生産活動に挑戦。社会とのつながりを実感している。
新成人となるのは荒川真綾さん(20)、緒方歩さん(20)、高祖大樹さん(20)、末次正昂さん(19)、三ケ島直美さん(20)、松永匡平さん(20)。全員、佐賀市の自宅から週に数回、午前10時から午後3時半まで通っている。
脳性まひや知的障害、足の変形、食道閉鎖などハンディはさまざまだが、全員が午前中は生産活動に携わる。幼稚園や市役所などに配達する乾燥プルーンを数えて袋に詰める作業。自分ができることで、社会に貢献する喜びを感じ取っている。
早産などで新生児集中治療室に入り、気管切開や胃ろうの手術、けいれんを抑える薬の服用など治療を続けてきた彼らにとって、意思表示や体を動かす力は、幼児期から特別支援学校などで訓練してきた成果でもある。
6人には10日、一足早く市肢体不自由児者父母の会から花束が贈られた。たん吸引など24時間看護が必要な長女を育てる母親は「同じ障害の仲間が早くに亡くなり、常に覚悟してきた。成人式を迎えてくれて、ここ数日、涙が止まらない」。「仮死状態で生まれて脳性まひになり、1歳半で座ることすらできなかった子が、こんなに成長して」と孫のスーツ姿に言葉を詰まらせる祖母の姿もあった。
同事業所で毎年、新成人のために開いてきた「お祝い会」も、今年は例年になく人数が多いことから、市内の式場を借りて20日に開く。特別支援学校の恩師も駆けつけてくれる予定で、宮原里美施設長は「どんなに喜んでくれるか、職員も楽しみ」と語る。
■大人の自覚、就職目指す
佐賀市の久保田亮さん(19)は、同市の障害者就労移行支援事業所「ジョブサポートそら」に通いながら一般企業への就職を目指している。成人式を間近に控え、苦手だった人前での意思表示ができるようになり「大人として頑張っていきたい」と意欲を語る。
1歳で熱性けいれんのため知的障害となった。地元の小中学校、大和特別支援学校高等部を経て、一昨年から就労支援を受けている。
就労訓練は週6回、午前8時から午後5時まで。人前で緊張する性格のため、当初は指示された作業を無言でこなすだけだったが、一緒に訓練を受ける仲間の影響を受け、少しずつ言葉が出るようになった。
昨夏には建設会社の職場を体験。有明海の漂流物の撤去作業に取り組み、自信をつけた。指導に当たる鴨川隆史主任は「肥料工場での現場実習を自ら申し出るなど自発性が急に芽生えてきた。まじめに作業する責任感の強さも武器」と成長ぶりを語る。
13日の佐賀市の成人式には、慣れないネクタイの締め方を父から教わり、姉が髪を整えてくれるなど、家族総出で準備する。母親の真弓さんは「やっとここまでこれた。使命感が強くて無理し過ぎる性格の子だけに、働く意義や暮らす楽しさを丹念に教えてくれる施設に感謝している」と目を細めた。

花束を受け取り喜ぶ新成人。前列は、右から三ヶ島さん、高祖さん、松永さん。後列は、右から緒方さん、末次さん、荒川さん=佐賀市の生活介護事業所「響」

鴨川主任(左)から指導を受ける久保田さん。生活するための収入や働き方も丁寧に説明を受けていた=佐賀市のジョブサポートそら
佐賀新聞-2013年01月13日更新