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Channel: ゴエモンのつぶやき
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障害者の就労 積極支援 推進担うセンター新設

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■定員超す施設も

 赤城山から冷たい風が吹き付ける先月30日、凍えるような屋外から一転、暖かなビニールハウスで若者たちが作業に没頭していた。マリーゴールドの種をピンセットでつまんでは、発芽用の養土が入った約2センチ四方の枠に三つずつ入れていく。隣のハウスでは、近くの畑で採れた唐辛子を1本ずつ小袋に詰めている。どれも根気がいる作業だ。

 社会福祉法人「三山黎明(れいめい)会」が運営する障害福祉サービス事業所「まほろ」(前橋市青柳町)には、高校を卒業したばかりの若者から50歳くらいまで、知的障害を持つ43人が通う。平均年齢は33歳。企業から請け負ったホチキスの針の箱詰め作業など「下請け事業部」と、野菜や花を育てる「花野菜事業部」に分かれ、平日1日4時間働く。

 雇用契約に基づかない「就労継続支援B型事業所」のため、工賃(給料)は月平均1万3000円程度。そのため同法人は昨年4月、雇用契約に基づく同A型事業所を目指し、作業場を併設した農産物直売所をオープンさせた。工賃アップと就労機会をさらに増やすのが目的だ。

 県障害政策課によると、こうした就労継続支援の施設はA、B型合わせて県内に75か所(定員1601人)ある。一般企業での就労が困難な障害者に働く場を提供するのが本来の趣旨だが、まほろの茂木厚志施設長は「一般企業でも働ける能力をもった人の通所が増えていると感じる」とつぶやく。

 まほろに来春、通所を希望している人は10人いる。だが、施設は定員の40人をオーバーしており、希望者全員を受け入れられる状況にない。「ハローワークに行っても求人がなく、うちの施設から一般企業に就職できた人はいない。県内では通所希望者が増え、施設すら利用できない人も出ていると聞く」と茂木さんは言う。

■法定雇用率上げ

 新年度は、障害者の雇用促進に向けたさらなる取り組みが官民ともに求められる。4月に法定雇用率が0・2ポイント引き上げられ、国や自治体で2・3%、教育委員会で2・2%、民間企業で2・0%となるためだ。

 47都道府県の知事部局の雇用率(昨年6月現在)は平均2・46%に対し、群馬県は2・18%で41位。民間企業はさらに深刻で、県内は1・59%と、全国平均(1・69%)のほか、現行の法定雇用率(1・8%)さえ下回っている。

 県は新年度、障害者の就労にかかわる施策を総合的に展開する「障害者就労サポートセンター」を県庁内に設置。特別支援学校の生徒のニーズに合わせて実習先や就労先を開拓したり、企業への各種助成金の情報提供に力を入れたりと、取り組みを加速させる。

 県庁も障害者5人を3年間、非常勤嘱託職員として直接雇用し、“率先垂範”の姿勢を示す。県労働政策課の明石智治課長は「民間企業の法定雇用率をまずは全国平均に引き上げたい」と話す。

 ただ、企業が障害者を雇用する場合、知的・精神よりも身体障害者を優先する傾向がある。全国では障害者雇用に特別の配慮をした「特例子会社」を設立する動きも広がり、知的障害者の雇用拡大につながると期待されている。設置数は全国で349社(昨年5月末現在)に上るが、県内では2社にとどまっているのが実情だ。

 県知的障害者福祉協会の大渕純男会長は「一般でも就労が困難な中、障害者に目を向けてくれるのはありがたい。雇用の機会を広げるため特例子会社の周知や、事業主への支援などにも力を入れて欲しい」と話す。


花の種を植える作業に取り組む通所者(1月30日午後、前橋市青柳町の「まほろ」で)

■保護者ら安堵

 障害者の就労支援と同様、重要なのが、就学に向けた環境整備だ。大沢知事が「ライフワーク」として特に力を入れているのが、県内3地域に残る特別支援学校の未設置地域の解消。今春には、3地域の一つ、富岡甘楽地域にみやま養護学校富岡分校(富岡市)が開校する。

 残るは藤岡多野と吾妻の2地域となるが、県は2月補正予算案と新年度当初予算案に、みやま養護学校藤岡分校(藤岡市)の整備費、榛名養護学校吾妻分校(中之条町)の実施設計費を計上した。それぞれ14年4月と15年4月の開校に向け、取り組みが一歩前進した。

 「地元の学校に通うという当たり前のことができることがうれしい」。

 重度の肢体不自由と知的障害がある小学2年の次男(8)を週3日、中之条町の自宅から1時間弱かけて、高崎市にある県立二葉養護学校に送り迎えしている母親(40)は、自宅から5分の距離に再来年、榛名養護学校吾妻分校が開校することに、安堵(あんど)の表情を浮かべる。

 体温調整がうまくできない次男にとって学校への送り迎えの道中は一苦労。夏の暑さや車の暖房で体温が37度後半になることもある。中には、薬などの注入のため途中で車を止めながら、片道1時間半かけて学校に通う親子もいるという。

 特別支援学校の未設置地域の解消は、障害児を持つ多くの親にとって喜ばしいことだが、今後開校する3校はいずれも小中学生が対象のため、「中学卒業後には、また遠くの高等養護学校などに送り迎えしなければいけない」ととまどう保護者も少なくない。

 「特別支援学校の施設整備と職業自立」は、県が新年度予算で七つの重点施策の一つに挙げた項目。障害者とその家族が安心して学び・暮らせる環境づくりに向け、引き続ききめ細やかな施策が求められている。


4月の開校に向け、工事が進むみやま養護学校富岡分校(6日、富岡市七日市で)

(2013年2月7日 読売新聞)

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