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【知恵の経営】障害者の就労移行支援施設モデル

 □法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

 「障害者雇用促進法」が改正され、今年4月から法定雇用率は、これまでの1.8%から2.0%に引き上げられ、対象企業もこれまでの56人以上が50人以上企業に引き下げられる。

 加えて言えば、未達成企業に対する官公需の入札を制限するといった動きも自治体レベルではある。こうなると、企業は好むと好まざるとにかかわらず、障害者雇用に積極的に取り組まざるを得ない。

 ◆未達成企業55%

 こうした動きは当然だ。というのは、現在、わが国には障害者が約720万人、人口比では約6%いるが、障害者雇用の平均は1.7%、未達成企業がなんと55%も存在しているからである。

 しかしながら、近年、多くの企業は企業の社会的責任の高まりもあり、障害者雇用を増加させようという意欲は高まっているものの、不安も依然として横たわり躊躇(ちゅうちょ)している企業も少なからず存在している。その最大の原因は、多くの企業関係者は障害者が就労する仕事は単純作業などに限られていると思っているからである。

 こうした企業や福祉関係者に夢と勇気を与えてくれると思われる企業が、今回紹介するフェスティーナレンテという社名の中小企業である。

 同社の所在地は東京・池袋から東武東上線に乗車して約20分の成増駅の近くである。

 主事業は「障害者の就労移行支援施設」の運営。具体的には、特別支援学校を卒業したが就職できなかった障害者や、一般企業で従業員として働いていたが、何らかの原因で障害者となり離職した人々の再復帰に向けての就労訓練をする施設である。

 こうした就労移行支援を専門とする会社は全国各地に多々あるが、同社の就労移行を支援するための基本的考え方や、その訓練内容は代表的モデルと言っても過言ではない。

 ◆就職率が50%

 一般に、6カ月程度訓練した後の民間企業への就職率は10%程度以下といわれているが、同社の場合は50%以上にも達している。

 また、多くの障害者の一般企業での仕事は、部品の組み立てやラベル張り・清掃・洗濯業務などの軽作業であるが、同社の訓練生の大半は、一般企業の事務員や事務補助、あるいはIT(情報技術)関連の仕事に就いている。

 さらに、同社の評価が高まった最大の理由は、創業者の佐藤悟氏の施設運営に対する強い思いがあったからである。ちなみに佐藤氏の娘は生まれつき重度の知的障害者という。重度の知的障害者でも、工場の軽作業だけでなく、事務作業やIT職場での就労が可能であるということを証明したかったと佐藤氏は言う。

 筆者らが訪問した当日も、32人の訓練生がスーツ姿で普通の会社のような明るい事務所で、マナー教育などの社会人基礎力を高める訓練を受けていた。ちなみに筆者らに湯茶の接待を見事にしてくれた男女も訓練生であった。

 この施設を見れば、必ずや企業はもとより福祉関係者も、障害者の就労に対する理解と関心が飛躍的に高まるに違いない。多くの読者に訪ねてほしい。

                   ◇

【会社概要】アタックスグループ

 顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

SankeiBiz-2013.3.6 05:00

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