農業生産法人つしまファーム(対馬徳昭社長)は、関連法人の福祉施設が集まる札幌市清田区真栄の「アンデルセン福祉村」で、高級魚トラフグの養殖を始めた。高齢者や障害者の雇用創出が狙い。敷地内で湧く温泉水を使い、冬も適温で育てられるため、道内では珍しいフグ養殖が可能になった。
道内は海水温が低く、海上でのフグ養殖は困難。このため、バイオガス発電の廃熱で温めた人工海水を使っている十勝管内士幌町の第三セクターなど、一部でしか行われていなかった。
同ファームは、福祉村で通所リハビリ施設や障害者の就労支援事業所などを運営する「つしま医療福祉グループ」が2013年に設立。夏場に野菜の生産、販売をしてきたが、通年雇用の場をつくるため、フグ養殖への参入を決めた。約170平方メートルの屋内養殖場に10トンの水槽4基を設置。今月中旬、栃木県の業者から仕入れた体長6~7センチの稚魚2千匹の飼育を始めた。
福祉村には施設の浴場に使う温泉の泉源があり、これを養殖用の人工海水づくりにも活用。水温を年中約20度に保てるため、フグが活発に動いて餌をよく食べ、成長が早まる。道外でも冬には水温が下がる海上養殖より5カ月早く、約1年で出荷可能な体長30センチ(800グラム~1キロ)に育つという。
同ファームの泉忠彦場長(71)や福祉村の就労支援事業所に通う障害者ら数人がフグの飼育に当たる。フグは道内の飲食店に出荷し、年間600万円の売上高を見込むほか、福祉村の施設の食事にも使う。同ファームの簗田系二(やなだけいじ)事務局長は「今後は事業拡大を目指し、高齢者、障害者を多く雇用して地域に貢献したい」と話している。
12/26 北海道新聞