東京の地下鉄の駅で今週、盲導犬を連れた男性がホームから転落して死亡しました。視覚障害者を対象にしたアンケートで、4割近くの人が「ホームから転落したことがある」と回答。事故を繰り返さないためには何が必要なのでしょうか。
今月15日、港区にある東京メトロ銀座線の駅で、盲導犬を連れた品田直人さん(55)が、電車にはねられ死亡した事故。品田さんは視力が低下する病気で、2009年ごろから盲導犬と行動を共にするようになったといいます。
「犬と一緒にいるということは、彼にとってものすごく支えになった」(品田さんの知人 村田龍一さん)
2008年まで北海道の幼稚園で園長を務めていた品田さん。
「子どもたちにもよく分かるように、トイレットペーパーの芯を目に当てて、『先生の視界はこの範囲でしか見えないんだよ。気をつけるからね』って」(元野幌めぐみ幼稚園 小原愛香園長)
目の病気が進行する中でも、品田さんは子どもたちを第一に考えていたといいます。
「先生の元気だった姿が、目に焼き付いているので、信じられない」(元野幌めぐみ幼稚園 小原愛香園長)
日本盲人会連合が行ったアンケートがあります。ホームから転落経験がある視覚障害者は37%。転落しそうになった人も60%に上りました。
今回の事故は防げなかったのでしょうか。これまでに、駅員が白線の内側に下がるようアナウンスした直後に品田さんが転落したことが分かっています。また、ホームの点字ブロックの上には柱があり、これをよける際にホームの端に近づいた可能性もあります。
東京都盲人福祉協会の笹川会長。自身も目が不自由で、外出時には杖を使います。
「ここに水たまりがありますが・・・」(記者)
「これは全然分からないから、そのまま行きます。これ(水たまり)は致し方ない。そこまで杖では・・・」(東京都盲人福祉協会 笹川吉彦さん)
40年ほど前、駅のホームから転落した経験がある笹川さんは、今回の事故を知り、現場を訪れました。
「銀座線の場合は電車が2~3分に1本、(ホームに)入ってくる。ひっきりなしです。音を頼りに歩いている者からすれば、(騒音で)非常に歩きにくい」(東京都盲人福祉協会 笹川吉彦さん)
駅では行き交う電車の音が反響するため、場所が把握しにくいといいます。
Q.事故の原因は何だと思うか?
「(点字)ブロックを踏み越したのではないか。私も何度も経験していますけど、(点字)ブロックの幅は約40センチしかない。普通の男性の歩幅は40~50センチですから、簡単にまたいでしまう」(東京都盲人福祉協会 笹川吉彦さん)
Q.どうすれば転落事故を防げる?
「ホームにいた方、横断歩道にいた方が、視覚障害者を見かけたら気楽に声をかけて一緒に(横断歩道を)渡る。一緒に(電車に)乗るということをしていただければ問題は解決する」(東京都盲人福祉協会 笹川吉彦さん)
一方で、市民からはこんな声も・・・
「(視覚障害者に)声をかけたら、大丈夫ですと言われた経験があって、逆にあまり言いすぎても申し訳ないのかなという気持ちがあった」(30代女性)
「(視覚障害者が)本当に困っていたら声をかけると思うけど、日常でそういう場面に出くわさないので、あまり気を使ってしまうと・・・」(20代大学生)
転落を防ぐのに最も効果的なのは、ホームドアの設置です。しかし、高額な予算や工事の難しさなどから、普及が進んでいないのが現状です。鉄道各社は、視覚障害者などが困っていた場合、駅員が積極的に声をかけるよう改めて指示するなどの対応をとっています。
(18日 TBS News)