周りの人から見ると障害だとわかりにくい発達障害を抱える人たちに対し、大阪市が2013年度、支援策を拡充する。子ども向けの専門療育体制のほか、遠足や登下校など校外活動での見守り事業もスタート。13年度当初予算案に、前年度に比べ約7倍の約3億6000万円を事業費として盛り込んだ。背景には、必要な支援が広がっていない現状がある。
「子どものタイプはそれぞれ違う。ここでは、得意なことや苦手なことを理解して、その子に合わせた支援をしてもらえるのでありがたい」。大阪市淀川区の「児童デイサービスセンターan」。放課後、発達障害の小学1年の女児(7)とともに訪れた母親(39)が話す。
文部科学省の昨年の調査では、全国の公立小中学校で発達障害の可能性がある児童生徒は全体の約6・5%と推定されている。しかし、一斉に多数の児童を指導する学校では個別の対応が難しく、適応できない子どももいる。05年に社会福祉法人が開設した「an」では、身支度や勉強、運動など、その子に応じた個別のプログラムを作り、専門スタッフが療育する。現在、約50人が通う。
市によると、こうした専門的な施設はまだ少ない。市は13年度、専門的な療育を提供できる法人に委託し、複数の施設で約200人分の個別療育体制を整える。登下校や遠足、部活動など、授業以外の場面でも児童生徒にボランティアらが付き添う事業や、学校・園の教員らへの研修も行う。
課題もある。発達障害児を育てる親の会「チャイルズ」代表の是沢ゆかりさん(46)は、「すぐに結果が出るものではないので、1年だけ予算がついても意味がない。個別の療育や学校での支援員を充実させるだけでなく、教員の数を増やし、理解や対応力をアップさせるなど、腰を据えた人材育成にも力を注いでもらいたい」と話している。
▽広く浅い福祉見直し 区独自も
財政再建のために市民サービスの削減を進めている大阪市は、10月から高齢者世帯などの水道料金の減免制度を廃止。これにより13年度当初予算案で16億6000万円分カットした。一方で、発達障害者のほか、高齢者らの支援のために計14億5000万円を計上。市は「これまでの広く浅い福祉サービスを見直し、本当に支援が必要な人に思い切って力を入れる」とする。
この中には、区独自の事業も多い。東成区では商店街などで使える地域通貨を発行、高齢者らが家の片付けや買い物などをボランティアに頼んだ際の対価として利用してもらう制度を予定。天王寺区では75歳以上の一人暮らしの高齢者らをボランティアらが訪問し、大正区では災害時に支援が必要な人の調査をする。
◆発達障害 脳機能の障害。社会性などに障害のある自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害、集中力が続きにくい注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算が難しい学習障害(LD)がある。05年施行の発達障害者支援法で、早期発見と支援が国や自治体の責務と定められた。
(2013年3月14日 読売新聞)
「子どものタイプはそれぞれ違う。ここでは、得意なことや苦手なことを理解して、その子に合わせた支援をしてもらえるのでありがたい」。大阪市淀川区の「児童デイサービスセンターan」。放課後、発達障害の小学1年の女児(7)とともに訪れた母親(39)が話す。
文部科学省の昨年の調査では、全国の公立小中学校で発達障害の可能性がある児童生徒は全体の約6・5%と推定されている。しかし、一斉に多数の児童を指導する学校では個別の対応が難しく、適応できない子どももいる。05年に社会福祉法人が開設した「an」では、身支度や勉強、運動など、その子に応じた個別のプログラムを作り、専門スタッフが療育する。現在、約50人が通う。
市によると、こうした専門的な施設はまだ少ない。市は13年度、専門的な療育を提供できる法人に委託し、複数の施設で約200人分の個別療育体制を整える。登下校や遠足、部活動など、授業以外の場面でも児童生徒にボランティアらが付き添う事業や、学校・園の教員らへの研修も行う。
課題もある。発達障害児を育てる親の会「チャイルズ」代表の是沢ゆかりさん(46)は、「すぐに結果が出るものではないので、1年だけ予算がついても意味がない。個別の療育や学校での支援員を充実させるだけでなく、教員の数を増やし、理解や対応力をアップさせるなど、腰を据えた人材育成にも力を注いでもらいたい」と話している。
▽広く浅い福祉見直し 区独自も
財政再建のために市民サービスの削減を進めている大阪市は、10月から高齢者世帯などの水道料金の減免制度を廃止。これにより13年度当初予算案で16億6000万円分カットした。一方で、発達障害者のほか、高齢者らの支援のために計14億5000万円を計上。市は「これまでの広く浅い福祉サービスを見直し、本当に支援が必要な人に思い切って力を入れる」とする。
この中には、区独自の事業も多い。東成区では商店街などで使える地域通貨を発行、高齢者らが家の片付けや買い物などをボランティアに頼んだ際の対価として利用してもらう制度を予定。天王寺区では75歳以上の一人暮らしの高齢者らをボランティアらが訪問し、大正区では災害時に支援が必要な人の調査をする。
◆発達障害 脳機能の障害。社会性などに障害のある自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害、集中力が続きにくい注意欠陥・多動性障害(ADHD)、読み書きや計算が難しい学習障害(LD)がある。05年施行の発達障害者支援法で、早期発見と支援が国や自治体の責務と定められた。
(2013年3月14日 読売新聞)