豊中市の作業所「工房羅針盤」では、脳卒中などの病気や事故で脳に障害が残った人たちが社会復帰を目指し、お菓子の袋詰めなどの作業に取り組む。施設長の山河正裕さん(46)=同市=は多くの利用者の社会復帰を支えてきたが2006年の障害者自立支援法の施行以降、「利用者負担」を原則とする国の方針が重くのしかかる。「なぜ自立を目指して訓練する人からお金を取らないといけないのか。ここの利用者は取り残されている」。不安と憤りが募る。
山河さんは6月、利用者の男性(31)から「利用する回数を減らすかもしれない」と相談を受けた。男性は、交通事故で一時意識不明になり退院後、勤務先を退職。身体的な障害は残らなかったが、物事を覚えることが極端に難しくなった。事故後、妻はパートを掛け持ちし家計を支えるが6月ごろから体調を崩した。男性が週5日間、作業所に通って得られる毎月の工賃1万円に対し、利用料は月約1万5000円。「妻にこれ以上負担をかけられない」と話す。利用料を徴収しないと行政からの運営費も削られる仕組みで、羅針盤は利用者と行政の板挟みとなっている。
障害者や世論の強い反発を受け国は09年、自立支援法の見直しに着手し、「いい方向に向かってくれる」と山河さんらは期待した。低所得者への減免措置の対象が拡大され、それまで本人の収入に含めていた同居する親の収入を除外した結果、約9割の人の負担が免除された。しかし、羅針盤の利用者のほとんどは、減免措置を受けられなかった。障害を負う前に親元を離れ結婚している人が多いが、配偶者の収入は除外されないからだ。
今年4月、障害者自立支援法を改正した障害者総合支援法が施行されたが「利用者負担」の原則は残ったままだ。かつて自立支援法に反発した世論も、当時ほどの盛り上がりはない。山河さんは「障害者の話は選挙の争点にはなりにくいが、候補者だって有権者だって、いつ本人や身近な人が障害を抱えることになるかわからない。自分のことだと思って目を向けてほしい」と訴えている。
毎日新聞 2013年07月17日 地方版
山河さんは6月、利用者の男性(31)から「利用する回数を減らすかもしれない」と相談を受けた。男性は、交通事故で一時意識不明になり退院後、勤務先を退職。身体的な障害は残らなかったが、物事を覚えることが極端に難しくなった。事故後、妻はパートを掛け持ちし家計を支えるが6月ごろから体調を崩した。男性が週5日間、作業所に通って得られる毎月の工賃1万円に対し、利用料は月約1万5000円。「妻にこれ以上負担をかけられない」と話す。利用料を徴収しないと行政からの運営費も削られる仕組みで、羅針盤は利用者と行政の板挟みとなっている。
障害者や世論の強い反発を受け国は09年、自立支援法の見直しに着手し、「いい方向に向かってくれる」と山河さんらは期待した。低所得者への減免措置の対象が拡大され、それまで本人の収入に含めていた同居する親の収入を除外した結果、約9割の人の負担が免除された。しかし、羅針盤の利用者のほとんどは、減免措置を受けられなかった。障害を負う前に親元を離れ結婚している人が多いが、配偶者の収入は除外されないからだ。
今年4月、障害者自立支援法を改正した障害者総合支援法が施行されたが「利用者負担」の原則は残ったままだ。かつて自立支援法に反発した世論も、当時ほどの盛り上がりはない。山河さんは「障害者の話は選挙の争点にはなりにくいが、候補者だって有権者だって、いつ本人や身近な人が障害を抱えることになるかわからない。自分のことだと思って目を向けてほしい」と訴えている。
毎日新聞 2013年07月17日 地方版