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障害者雇用率上げ 互いのメリット構築必要

 企業に障害者の雇用を義務づけている法定雇用率が2013年度に現行1・8%から2%に引き上げられる。雇用率アップは就職を望む障害者には朗報だが、採用に消極的な中小企業や民間に率先すべき公的機関の雇用遅れが課題だろう。

 ただ、雇用率順守ありきの採用であってはならない。企業に経営メリットがあり、障害者も企業活動に参加できる喜びを得る良好な雇用関係を築きたい。

 民間企業で働く障害者は約36万6千人(厚生労働省・11年6月時点)。障害者雇用促進法により就業者はこの10年で10万人以上増えているが、約744万人と推計される障害者全体からみればまだ少ない。

 県内は法定雇用率適用の民間568社に就労している障害者は過去最高の2127人(同時点)。雇用率2・19%は全国で2番目に高い。雇用率を達成した企業は55%を超え全国(45・3%)を上回っている。11年度に県内ハローワークを通じ就職した障害者は603人。就職率も全国トップの実績だった。

 県内障害者の働きたいとの強い意欲の表れであり、障害者を後押しするハローワークなど関係機関の支援、それに企業側の社会的責任の高まりがかみ合ってきたと捉えられる。

 しかし、中小企業はまだ障害者の採用経験がないなどの理由で雇用が伸びておらず、中小の雇用率アップが今後の焦点だ。全国で従業員千人以上の企業の障害者雇用率は1・84%だが、56〜99人の企業になると1・36%に落ち込んでいる。また、行政機関で法定を下回っている課題も浮かぶ。民間をリードすべき立場にある。率先して障害者雇用を高めてほしい。

 中小の経営者から各地域の障害者職業センターにはさまざまな相談が寄せられる。職場にとけ込めるか、仕事がきちんとできるか、仕事の教育法など採用側の不安がうかがえる。ジョブコーチ制度など援助策の活用をもっと促したい。

 独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」の10年報告によれば、企業にとって障害者雇用の最大の課題は「担当業務の選定」だった。社内に障害者に適した仕事がなく、新たに設けることもできないのが雇用に消極的な一番の理由のようだ。

 厚労省の08年調査でも身体、知的、精神の三つの障害者とも「会社内に適当な仕事があるか」が雇用を解決する上での企業側の心配となっている。障害者は仕事に慣れるのに時間はかかるが、インターンシップなどの形で事前に体験期間を設けるなど方法はある。

 同支援機構は報告で「障害者雇用が温情や居場所作りのためなら障害者にとって、企業にとっても不幸である」と強調している。国際労働機関(ILO)が提唱するように「働きがいのある人間らしい仕事の実現」が障害者雇用管理の哲学である。

 繰り返しの作業は障害者が得意だと戦力として雇用を継続している経営者は多い。障害者にも「できないと決め付けず職場を作ってほしい」と積極的な声もある。お金より働く幸せの方がずっと大きいと知っている。

福井新聞-(2012年11月10日午前7時20分)

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