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ホームドア設置進まず、まだ14%…コスト課題

 ホームから線路に転落する事故などを防止するホームドアの設置が思うように進んでいない。

 国土交通省は全国の鉄道事業者に対し、「1日の利用客が10万人以上の駅」に導入するよう求めているが、実現したのは対象駅の約14%にとどまる。設置費用が高額な上、ドアの数や位置が異なる車両が相互に乗り入れる駅では設置そのものが困難とあって、各社の対応に差も出始めている。

 ◆235駅中34駅

 ホームドア設置の機運が高まったのは、2001年1月にJR山手線新大久保駅でホームから転落した乗客を助けようとした韓国人留学生らが死亡した事故がきっかけ。国交省が全国の鉄道事業者にホームドア設置などの対策を求め、06年施行のバリアフリー新法にも設置規定が盛り込まれた。

 しかし、その後も事故は後を絶たず、昨年1月にはホームドアのないJR山手線目白駅で全盲の男性が転落死する事故が起きた。国交省によると、今年9月末現在、ホームドアが設置されているのは、全国約9500駅のうち539駅にとどまる。国交省の検討会は「1日の利用客が10万人以上の駅」にホームドアなどを優先整備するよう求めたが、設置駅は対象の235駅のうち34駅にとどまる。

 ◆山手線は前倒し

 1991年からホームドア導入に踏み切った東京メトロでは、全179駅の4割強にあたる78駅が設置済み。設置済みの駅では、転落、接触事故は0件。同社は「利用客の安全だけでなく、定時運行にもつながっている」として、全駅での設置を目標に掲げる。

 JR東日本はホームドア設置で出遅れていたが、10月30日に発表した経営構想で、「『ホームドアを設置すべきだ』とする社会の声が急速に高まっている」として計画の前倒しを表明。利用客の多い山手線だけでなく他の在来線にも広げるとした。

 山手線の全29駅のうち、目黒、恵比寿の2駅は10年にホームドアを設置済みで、池袋、大崎の2駅も今年度に使用開始される予定だ。他の残る駅も順次、整備を進め、予定より2年程度早い2015年度に完了させる。乗降客が多いターミナル駅の東京、新宿など6駅も、時期は未定ながら導入する方針を決めた。

 ◆視覚障害者は切実

 導入に向けた障害の一つが、ドアの数や位置が異なる車両が相互に乗り入れているケース。京浜急行の場合、設置駅は羽田空港国際線ターミナル駅の1駅だけ。「1車両につきドアが2〜4か所と3タイプの車両があり、設置は容易ではない」と語る。JR東海も在来線駅ではまだ設置例がなく山田佳臣社長は「ドアの位置が車両によって様々。設置は当面できない」と説明する。

 東京大と神戸製鋼所は今月8日、扉の位置や数が異なる車両に対応する新型のホームドアを発表したが、商品化はまだ先。価格も未定で、同社は「いくらになるかはわからない」という。

 しかし、駅を利用する視覚障害者は切実だ。全日本視覚障害者協議会の総務局次長で、全盲の織田洋さん(58)は「点字ブロックがあっても踏み外すことがあり、視覚障害者はいつも緊張しながらホームを歩いている」と語り、ホームドアの早期導入を訴える。

 これに対し、国交省の担当者は「計画、工事は年単位の時間が必要。これからも各社の取り組みを見守っていきたい」としている。

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JR山手線恵比寿駅に設置されているホームドア(10月29日撮影)

(2012年11月12日15時02分 読売新聞)

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