Quantcast
Channel: ゴエモンのつぶやき
Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

東京五輪への夢 障害者競技 理解広げる

$
0
0
 「右から来るぞー」「ナイスブロック!」。昨年12月、水戸市にある茨城県立盲学校の体育館に大きなかけ声が響いた。

 運動部の部員が、パラリンピック種目のゴールボール(GB)で攻防を繰り広げていた。

 1チーム3人。全員が目隠しをして、鈴の入ったバスケットボールほどの大きさの球を投げ合い、相手のゴールを狙う。攻撃側は大きく腕を振り上げ、体全体を使ってアンダースローで球を投げ込む。守備では、鈴の音を聞き分けて球の速さやコースを予測し、体で止める。

 積極的に声を出し、チームを鼓舞していた高等部普通科2年、山口凌河りょうがさん(17)は、床に弾ませるバウンドボールを生かした攻撃が持ち味だ。GBの日本代表で、運動部を指導する伊藤雅敏教諭(31)は「競技歴は短いが、技術的にも精神的にも成長してきた。野球の経験が生きている」と喜ぶ。

 山口さんは野球部主将で捕手だった中学2年の春休み、視界の中心がぼやけ、取り損ねた球が体に当たるようになった。中3の夏休みに「レーベル病」と診断され、秋にはほぼ見えなくなった。山口さんは「目の前で手を振っても、何となく分かる程度。前に曇りガラスがある感じ」と説明する。

 仲間に励まされて中学を卒業後、盲学校に進学して初めてGBを知った。日本代表として活躍する伊藤教諭への憧れに加え、先輩がいきいきと活動しているのを知り、運動部に入部。最初は音をうまく聞き取れず、迫ってきた球と逆方向に動くこともあったが、練習を積み重ねて頭角を現していった。

 昨年7月の世界ユース大会、同10月のアジアユース大会にも日本代表として出場。果敢な攻めでメダル獲得に貢献した。山口さんは「将来はパラリンピックでメダルを取り、支えてくれた方に恩返ししたい」と話す。伊藤教諭は「練習できる環境に恵まれていることは幸せ。設備やメンバーがそろわず苦労している人も多い」と語る。

 障害者スポーツを取り巻く環境は厳しい。「車いすや義足で床に傷が付く」といった理由で体育館などの利用を断られることも多く、活動場所の確保が難しいからだ。昨年10月、日本パラリンピック委員会などは政府に活動場所の整備を求めた。

 文部科学省は、障害者スポーツへの理解を深める必要があるとして、健常者と障害者の交流行事を支援する。昨年12月に山梨県南アルプス市で開かれた「ボッチャ」体験会も、同省の委託事業の一つ。カーリングに似たパラリンピック種目で、球を投げて目標の球にどれだけ近づいたかを競う。初体験だった団体職員、佐野久子さん(32)は「簡単に遊べる。他の人にも楽しさを伝えたい」と話した。

 政府は今後、施設の整備や障害者スポーツの普及などを行って、パラリンピック支援に力を入れるほか、障害者が暮らしやすい街づくりも進め、世界にアピールしたい考えだ。

(2014年1月25日 読売新聞)

Viewing all articles
Browse latest Browse all 17470

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>