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障害者条約 共生社会の道筋確かに

 政府は、障害者への差別を解消し、社会参加を促す国連の障害者権利条約に批准した。

 条約は2006年に国連総会で採択され、既に世界138カ国・地域が批准している。日本もようやく、それらの国々の仲間入りを果たすことになった。

 国内ではバリアフリー化など施設整備が進む一方、心ない言葉を浴びせたり、理由なく就職の機会を奪ったりするなど差別が後を絶たない。

 批准を機に、障害の有無にかかわらず誰もが安心して暮らせる社会の構築に弾みをつけたい。

 条約は、障害者にも健常者と同等の権利保障をうたった21世紀最初の国際人権規定だ。政府に福祉や雇用、政治参加などの分野で平等を促進する立法措置を求めている。

 政府は09年に批准を試みたが、障害者団体から「名ばかりでは意味がない」との批判を受け、法律や制度の見直しに取り組んできた。

 形は整いつつあるものの、内容は十分とは言えない。

 障害者が受けられる福祉サービスを定めた障害者自立支援法は一部改正され、12年に総合支援法と名称を変えた。難病患者も対象に加えるなど前進面はあるが、当事者の意向が
反映されているとは言い難い。

 とりわけ問題なのは、サービスを決める目安となる障害支援区分が実態を反映していないことである。

 一人一人障害が異なるにもかかわらず、画一的に判定されるとの批判が強かった。当事者のニーズに即したサービスが受けられるよう、批准を機に仕組みを変えるべきだ。

 障害者差別解消法も16年に施行される。行政や、飲食、物販などの民間業者を対象に障害を理由とした差別を禁止し、配慮を求めている。

 しかし、何が差別で、どう配慮すべきなのかなど、参考となる基準はない。国は具体例を盛り込んだガイドラインの作成を急いでほしい。

 もちろん国の制度を見直し、条約を批准しても差別が自然に解消されるわけではない。当事者の声を反映させながら、不便や不公平をなくす日常的な取り組みが大事だ。

 石狩市は昨年末、手話を日本語と同じ言語として位置づけ、市民の手話への理解を促す手話基本条例を制定した。小学校での手話学習などを検討しているという。

 地方の実情や住民の要望に沿ったこうした施策も欠かせない。

 民間でも飲食店で点字メニューを導入したり、メニューを読み上げたりするなど、きめ細かな対策を講じる必要があろう。

 障害者に公平でやさしい社会は、今後さらに進行する高齢化にも対応できるはずだ。

北海道新聞 - (1月28日)

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