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広がる生活困窮者支援

再就職への訓練、家賃補助

 長期失業や病気などで困窮した人に、自治体の専門職員らが自立支援を行う生活困窮者自立支援法が、昨年末に成立した。

 新しい支援制度では、自治体が困窮者のため相談窓口を設け、再就職に向けた訓練などを行うが、協力企業の発掘など課題は多い。

自治体が窓口

 大阪府豊中市は、新制度のモデルとなった事業を早くから導入し、自力で就職が難しい人たちへの支援に力を入れてきた。

 同市の食品物流会社に勤めて2年になる20歳代後半の女性は、「自分だけでは、ここまで働けるようになるのは困難だった」と語る。

 短大を卒業後、ホテルの清掃の仕事に就いた。就職難の時代だった。「別の仕事を」と2年で退職し転職を目指したが、何社受けても、書類選考も通らない。自信を失い、家にこもった。2008年、両親と市の相談窓口を訪れた。

 同市は03年に「地域就労支援センター」を開設し、若年無業者(ニート)や長期失業者、病気や障害のある人など、ハローワークでの職探しが難しい人への自立支援を行ってきた。企業や福祉施設、NPOなどと連携し、個々に合った就労訓練を提供し、段階的に就職へ向けて力をつけるよう応援するのが特徴だ。

 センターには就職支援のコーディネーターが13人配置され、個別に相談を担当。自信喪失に陥っていたこの女性は、コミュニケーションの訓練も兼ねて福祉施設の売店で就労を体験した。その後、市役所での事務作業や就職準備講座など体験を重ねた。2年後に部品卸会社に就職したが、働きが評価されず1か月で雇用契約が切られた。それでも市が支援を続け、今の会社に就職することができた。

 「地域就労支援センター」は大阪府の補助事業だが、豊中市で開設した当初は就労支援の手段は限られた。このため同市は企業や団体に働きかけて、職場実習など、再び社会に参加する訓練の場を確保。空き店舗を使い、昼食を一緒に作って食べる交流の場も設けた。

 相談窓口には引きこもりやひとり親家庭など様々な事情の困窮者が来る。06年から職業紹介を手がけ、就職先の開拓も始めた。12年度の相談者は1033人。就職できた人は386人に上った。こうした結果、生活保護受給者の増加傾向が抑制された。

 同市市民協働部の西岡正次理事は「就職先を発掘し、そこに向け多様な就労訓練の場を作ることが重要。それがなければ窓口を作っても生活保護で支えなければならなくなる」と話す。

財源確保に課題

 同様の支援に取り組む自治体は広がっているが、課題ものぞく。

 千葉市は昨年末、相談窓口を設けたが、協力企業などの確保に苦労している。年1000人ほどの相談を見込むが、「就労訓練の場を提供してくれるのはまだ社会福祉法人1か所のみ。地域で働きかけても反応は鈍い」と担当者。昨秋、首都圏の9自治体で、協力企業への税制優遇などを検討するよう国に要望した。

 窓口の設置と失業者への家賃補助は、自治体に実施が義務付けられるが、柱である就労支援や子どもの学習支援などは各自治体の判断で行うか否か決める。静岡県富士宮市の担当者は「幅広く相談を受ければ多様な支援メニューが必要になる。そのための財源が確保できるか心配」と悩む。

 首都大学東京の岡部卓教授(社会福祉学)は「自治体ごとの財政力や社会資源の有無などで地域格差が生じかねない。国は必要な支援の最低水準を示し、さらなる財政支援も検討すべきだ」と指摘する。

(2014年1月28日 読売新聞)

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