性同一性障害で戸籍上の性を男性から女性に変更した静岡県西部の会社経営者(57)が、性別変更を理由にゴルフ場の会員になるのを断られたとして、ゴルフ場を運営する会社などを相手に約七百九十万円の損害賠償を求めて静岡地裁浜松支部に提訴した。
二十日に第一回口頭弁論が開かれ、被告側は答弁書で請求棄却を求めた。
訴状によると、女性は県西部のゴルフ場の法人会員になるため、ゴルフ場の規定に沿って、二株(計二百十五万円)を販売業者から購入。今年六月に会員の紹介者二人を確保した上で申し込んだ。
女性は、戸籍謄本など必要書類を提出し、面接の連絡を待ったが約三週間連絡がなく、問い合わせると、ゴルフ場側は性別変更を理由に入会拒否を伝えた。女性は抗議し、理事会で審議されたが、入会を許可しないとの書面通知が届いただけで、拒否理由の開示はなかった。女性は、訴えで戸籍上の性別変更を可能にする「性同一性障害者性別特例法」に触れ、「性別を変更したことを理由として不平等な取り扱いをされない法律上保護された利益を有することは明らか」とし、ゴルフ場側の対応はそれに反すると主張している。
女性は物心ついたころから男性の体に違和感を覚えていたといい、二〇〇〇年に性同一性障害と診断され、一〇年末に戸籍の性別を女性に変更した。
女性は中日新聞の取材に「戸籍を見た後から拒否するのは合理性がなく、人権侵害。理由は性同一性障害者に対する無知と偏見によることは明らか。やっと女性になれたのに、なんでという気持ち」と思いを語った。
ゴルフ場運営会社の社長は「現会員で反対する人もいるだろうと考えた。私的クラブの要素も強く、(拒否で女性が)生活で不利益を被るわけではないと考えている」と話した。
性同一性障害 身体上の性と心の性が一致せずに違和感を覚え、一致する性を求め続ける障害。2人以上の医師が性同一性障害と診断し、20歳以上で現在は結婚しておらず、未成年の子どもがいないことなどを条件に性別を変更することができる。
中日新聞-2012年11月21日