精神科病院の空き病床を退院者の居住の場に転換しようとする国の検討案に対し、当事者や支援者から「退院者が地域で生きる機会が奪われる」と批判が出ている。約60団体でつくる県精神障害者社会復帰協議会(群精社協)や県精神障害者家族会連合会が23日、反対声明を出した。
厚生労働省によると、全国の精神科病棟の入院者数は約30万人。このうち約20万人が入院1年以上の長期入院者だ。厚労省は2003年以降、精神科医療の基本を入院から地域生活に転換。退院可能な状態なのに受け皿がない「社会的入院」患者約7万人を10年間で退院させる方針を打ち出した。しかし、13年度時点でも約5万人が入院を続けている。
精神科病棟の空き病床をグループホームやアパートの代わりにしようとする案は、国の有識者検討会で議論されている。委員の一人は「最善とは言えないまでも、病院で死ぬことと病院敷地内の自分の部屋で死ぬことには大きな違いがある。時限的であることも含めて早急に議論する必要がある」と述べた。一方、当事者からは「それでは入院と変わらない」という声が上がる。
伊勢崎市の男性(68)は、統合失調症で20代半ばから精神科病棟への入退院を繰り返し、約13年前、地域のグループホームで生活を始めた。入院中も届け出れば自由に外出でき、不便さは感じなかったが「病院で暮らしていては、患者としての気持ちが抜けない」と話す。若いころから詩を創作しており、2年前、地域で暮らす気持ちをこうつづった。「患者さんから社会人に変わり センターに通うのに最も気になることといへば天気のことだ 雨が降り続く日があっても 日照りが長く続く時があっても 農家も自分達も大変だと 世間を気遣うようになった」
群精社協の反対声明は田村憲久厚生労働相あて。「地域社会の中でさまざまな人間関係や体験の場を積み重ねながら悩みを解決していくのが自然な姿」と指摘し、病院敷地内での居住は「固定化した人間関係や体験機会に限定され、本質的に入院と変わらない」と主張する。地域の受け皿不足や当事者への偏見、家族による支援の限界という課題に対し「真正面から地道に取り組んでいく正攻法の解決を期待する」と訴えている。
空き病床の転換案に反対する当事者や支援団体は26日正午から、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で緊急集会を開く。
毎日新聞 2014年06月24日 地方版
厚生労働省によると、全国の精神科病棟の入院者数は約30万人。このうち約20万人が入院1年以上の長期入院者だ。厚労省は2003年以降、精神科医療の基本を入院から地域生活に転換。退院可能な状態なのに受け皿がない「社会的入院」患者約7万人を10年間で退院させる方針を打ち出した。しかし、13年度時点でも約5万人が入院を続けている。
精神科病棟の空き病床をグループホームやアパートの代わりにしようとする案は、国の有識者検討会で議論されている。委員の一人は「最善とは言えないまでも、病院で死ぬことと病院敷地内の自分の部屋で死ぬことには大きな違いがある。時限的であることも含めて早急に議論する必要がある」と述べた。一方、当事者からは「それでは入院と変わらない」という声が上がる。
伊勢崎市の男性(68)は、統合失調症で20代半ばから精神科病棟への入退院を繰り返し、約13年前、地域のグループホームで生活を始めた。入院中も届け出れば自由に外出でき、不便さは感じなかったが「病院で暮らしていては、患者としての気持ちが抜けない」と話す。若いころから詩を創作しており、2年前、地域で暮らす気持ちをこうつづった。「患者さんから社会人に変わり センターに通うのに最も気になることといへば天気のことだ 雨が降り続く日があっても 日照りが長く続く時があっても 農家も自分達も大変だと 世間を気遣うようになった」
群精社協の反対声明は田村憲久厚生労働相あて。「地域社会の中でさまざまな人間関係や体験の場を積み重ねながら悩みを解決していくのが自然な姿」と指摘し、病院敷地内での居住は「固定化した人間関係や体験機会に限定され、本質的に入院と変わらない」と主張する。地域の受け皿不足や当事者への偏見、家族による支援の限界という課題に対し「真正面から地道に取り組んでいく正攻法の解決を期待する」と訴えている。
空き病床の転換案に反対する当事者や支援団体は26日正午から、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で緊急集会を開く。
毎日新聞 2014年06月24日 地方版