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セルフヘルプの底力 “優等生”になったらあかん 心身障害者をもつ兄弟姉妹の会

 今月14日、土曜の夕方、神戸市兵庫区にある生活介護事業所「さくら」に三々五々、会社員らが集まった。2カ月に1度開かれている「神戸・心身障害者をもつ兄弟姉妹の会」(神戸きょうだい会、078・578・1929)の例会だ。障害のあるきょうだいを持つ人ら10人で、4時間近くにわたって、近況の報告や日ごろの心配事などを話し合った。

 障害のある子と一緒に育つ兄弟姉妹は、幼少期から、かけがえのない体験を積む。一方で、親の関心が障害のある子に向かいがちなため、親にかまってもらえない寂しさを感じることがあると言われている。成人してからは、年老いた親の代わりを務めなくてはという義務感さえ持ってしまいがちだ。自身の結婚の際も、社会の無理解から、思い悩むことになる。

 こうした障害者のきょうだい特有の思いを同じ立場同士でわかち合うのが各地にある「きょうだい会」だ。神戸会は約45年の歴史がある。

 事務局長の石倉悦子さんの妹には知的障害がある。悦子さんが会に入ったのは、20歳のころだ。同じ境遇の仲間と時間を共にするうちに、障害のある人のために何かしないといけないと常に心の内に背負っていた思いが次第に解け出し、居心地の良さに変わったという。

 それゆえに、石倉さんは会の運営で居心地の良さに心を配る。メンバーは現在、大学生から70代まで約50人。きょうだいの障害は、身体・知的・精神などさまざまだ。主な活動は例会や372号を数える会報発行。レクリエーションを兼ねた年1回の1泊旅行では、京都や九州などを訪れ交流を深めてきた。石倉さんを慕って、石倉さんの自宅に泊まっていく若いメンバーもいる。

 14日の例会には、「京都『障害者』を持つ兄弟姉妹の会」(京都きょうだい会、075・571・1973)の事務局長、梅田嘉一さん(60)も参加した。4歳下の弟に知的障害があった。弟は23年前に亡くなったが、その後も梅田さんは「障害者のきょうだいの助けになれば」と活動を続けている。

 肉親の情、優しさゆえに、誰にも打ち明けることができず、自分で困難を抱えがちなきょうだいに対して、梅田さんは思う。「“優等生”になったらあかんと思うのです。すべてを抱え込むのでなく、どこかではき出さないと自分がつぶれてしまう。自分を出す場の一つが、きょうだいの会であってほしい」

それが、障害のある本人のためにもなる。石倉さんも梅田さんもそう考えている。

毎日新聞 2014年06月28日 大阪朝刊

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