障害者就労支援施設の商品力の向上を目指し、NPO法人による実践指導・助言が宮城県内で活発になっている。仙台クラシックフェスティバル(せんくら)の客をターゲットにした商品開発の実践講座や、商品のラベル表示を指導する事業が行われ、施設側が意欲的に参加している。各施設は利用者が受け取る工賃の増額だけでなく、社会貢献にもつなげたい考えだ。
<見本品の講評会>
「音楽との結び付きが分からない」「何の楽器をイメージしたのか分かりにくい」。今月3日、東京エレクトロンホール宮城の会議室。10月3〜5日に仙台市青年文化センターなどで開かれるせんくらに向け、福祉施設など8団体が作った商品見本の講評会があった。ブローチ、ペンケース、Tシャツなどが並べられ、仙台フィルハーモニー管弦楽団の団員が助言した。
講評会は、芸術を通じて障害者を支援している「エイブル・アート・ジャパン」と「難民を助ける会」(いずれも東京)が開催している講座の一環。エイブル・アートから依頼された仙台フィルメンバー約10人が練習の合間に訪れた。辛口の指摘を施設スタッフは熱心に書き留めた。
<明確な目的必要>
8月上旬の1回目の講座では、職業や趣味、好みの服装などを想定して客のイメージを深める商品企画の方法を学んだ。講師を務めたデザイナーの前川亜希子さん(東京)は「明確な目的を持って商品を作っている施設が少ない。お客さまが本当に欲しいものを考えるきっかけにしてほしい」と話す。
各施設は、せんくらの売り場のコンセプトも話し合った。40〜60代の女性を中心的なターゲットに設定し、「ユーモアと温かみのあるグッズをきっかけに、気軽に音楽に興味を持ってもらう」などと決めた。
8月下旬の2回目の講座では、各施設が商品を持ち寄った。仙台市泉区の「アトリエ・ソキウス」は陶器のブローチの新デザインを考案した。それまでは動物などをデザインしていたが、抽象的な造形を複数組み合わせて販売する企画を考えた。
ブローチを自由に組み合わせる提案は他の参加者に好評で、ソキウスの黒田香奈子施設長は「音楽の創造性をイメージしながら、施設の仲間と考えた」と声を弾ませる。
<地域貢献目指す>
みやぎセルプ協働受注センター(仙台市)と日本セルプセンター(東京)はことし、施設の商品と表示ラベルを専門家に送付してチェックしてもらう事業を初めて実施している。約30施設が参加しており、みやぎセルプの武井博道さんは「表示がしっかりすることでより大きな流通に乗る可能性が高まる」と話す。
せんくら会場での商品売り上げの5%が「音楽の力による復興センター・東北」に寄付される。エイブル・アートの柴崎由美子代表は「施設は応援される側になりがちだが、商品力を高めて地域貢献できるようになってほしい」と語っている。
2014年09月10日水曜日 河北新報