◇大津の作業所メンバーが上演 ありのまま全身で表現
「やれることは少ないけど、誇り持って生きてるねん!」――。障害者の等身大の思いを舞台で表現している劇団が大津市大萱にある。作業所「まちかどプロジェクト」の約20人でつくる「まちプロ一座」だ。恋や一人暮らし、健常者とのトラブルといったメンバー自身の悩みが題材。人権や福祉のあり方などの本質的な問いを、コミカルな演劇で投げかけている。9月は、障害者雇用支援月間。(生田ちひろ)
まちかどプロジェクトは、社会福祉法人「共生シンフォニー」が2000年に設立。生活や就労の支援、障害者に対する理解の啓発などに取り組んでいる。
劇団は、3歳で日本脳炎にかかって左半身がまひしている太田好信さん(64)が01年に約10人で旗揚げした。利用者らが悩みを打ち明け合い、印象的な話をメンバーやスタッフが脚本にしている。「障害者が何かするからすごいのではなく、ありのままの自分たちを見てほしい」と、全身で表現できる演劇にたどり着いた。県内外の学校、自治体の研修などで上演している。
テーマは、一人暮らしをしたい主人公と施設に入れたい兄との葛藤、同級生への恋心、障害のある者同士の結婚のドタバタなどで、演目は約20まで増え、年に数回上演している。
ハッピーエンドを基調にしつつ、リアルな掛け合いが多くの笑いを誘う。演じる方法も様々で、発話ができなければ字幕を掲げる。身ぶりで感情を十分に表現できない場合は、電動車いすを回転させたり、動きに緩急をつけたりして表す。
18日に甲良町で演じるのは、電動車いすに乗った女子高生の探偵が、障害者と周囲のいざこざを解決する短編連作「バリアフリー探偵―レン―」だ。
ある一幕では、電動車いすの女性が、通りすがりの男性2人にお金を手渡され、「哀れみが悔しかった」と探偵のレンに相談する。男性たちが「自由に動けず、仕事もできない」「どう見てもかわいそう」と言い、女性が「働く場は少ないけど、働いてる」「酒も飲むし恋もする。楽しいことも多い。かわいそうとちゃうわ!」と叫び返すうちに、理解と共感が生まれる、という次第だ。
主演の橋本あささんは筋肉が衰えていく難病「筋ジストロフィー」を抱える。「舞台ではみんな輝いている。私も自分の思いを表現でき、何より演じていて楽しい」と稽古に励んでいる。作業所のスタッフ、河原林龍二さんも「セリフは包み隠さない本音だから面白く、気づかされることが多いはず」と来場を呼びかけている。
18日は午後7時半、甲良町在士の町公民館で開演。無料。問い合わせはまちかどプロジェクト(077・543・2844)。
2014年09月14日 読売新聞