公共交通機関の利用が難しい高齢者や障害者の移動をサポートする「福祉有償運送」の佐賀県内事業者登録が30事業者前後にとどまっている。高齢者は増え続け、国が在宅介護を推進している一方で、「運賃が安く、採算が取れない」と現場からは厳しい声が上がっている。
福祉有償運送は営利を目的としないNPOや社会福祉法人などが国に登録すれば、有償で移動サービスに取り組める制度。送迎対象は介護保険の認定を受けた高齢者や身体障害者らに限られ、2006年10月の道路運送法改正で認められた。
登録には、行政やタクシー事業者らでつくる運営協議会の合意が必要。佐賀運輸支局によると、06年度の登録は23事業者。その後、わずかに増えたが、ここ数年は30事業者前後で横ばいとなっている。
伸び悩んでいる要因は採算の問題。料金はタクシー運賃の半額程度と国が定めているため、佐賀市の事業者は「市内を回るのがやっと。燃料代を考えると、富士町や三瀬の依頼は断らざるをえない」と実情を訴える。利用登録者100人を抱える神埼市の事業所も「もうかる事業ではなく、運転手の月額報酬を6万円に抑えてやり繰りしている。年金生活者だから理解してもらえるが…」と話す。
移送NPOなど26団体でつくる「さが福祉移動サービス・ネットワーク」の江口陽介代表世話人は「福祉有償運送単体では採算が取れず、デイサービスなどで補完しているのが現状」と説明。「黙認されていた福祉有償運送が合法事業と社会的に認知された一方で、利用者が限定されてしまったデメリットもある。協議会の審査が精神的な負担になり、撤退した事業者もいる」とした。
全国の福祉有償運送に詳しい市民福祉団体全国協議会の田中尚輝専務理事は「本来は行政がやるべき事業を民間に押しつけたのが問題で、NPOに事務経費や人件費を補助すべきだろう。運輸業界を取り締まる道路運送法の枠に入れたことも筋道が立たず、福祉政策という観点から見直す必要がある」と指摘する。
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車いすを固定できる福祉車両。福祉有償運送は非営利団体にタクシー運賃の半額程度で認められている=佐賀市
佐賀新聞-2012年10月23日更新
福祉有償運送は営利を目的としないNPOや社会福祉法人などが国に登録すれば、有償で移動サービスに取り組める制度。送迎対象は介護保険の認定を受けた高齢者や身体障害者らに限られ、2006年10月の道路運送法改正で認められた。
登録には、行政やタクシー事業者らでつくる運営協議会の合意が必要。佐賀運輸支局によると、06年度の登録は23事業者。その後、わずかに増えたが、ここ数年は30事業者前後で横ばいとなっている。
伸び悩んでいる要因は採算の問題。料金はタクシー運賃の半額程度と国が定めているため、佐賀市の事業者は「市内を回るのがやっと。燃料代を考えると、富士町や三瀬の依頼は断らざるをえない」と実情を訴える。利用登録者100人を抱える神埼市の事業所も「もうかる事業ではなく、運転手の月額報酬を6万円に抑えてやり繰りしている。年金生活者だから理解してもらえるが…」と話す。
移送NPOなど26団体でつくる「さが福祉移動サービス・ネットワーク」の江口陽介代表世話人は「福祉有償運送単体では採算が取れず、デイサービスなどで補完しているのが現状」と説明。「黙認されていた福祉有償運送が合法事業と社会的に認知された一方で、利用者が限定されてしまったデメリットもある。協議会の審査が精神的な負担になり、撤退した事業者もいる」とした。
全国の福祉有償運送に詳しい市民福祉団体全国協議会の田中尚輝専務理事は「本来は行政がやるべき事業を民間に押しつけたのが問題で、NPOに事務経費や人件費を補助すべきだろう。運輸業界を取り締まる道路運送法の枠に入れたことも筋道が立たず、福祉政策という観点から見直す必要がある」と指摘する。
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車いすを固定できる福祉車両。福祉有償運送は非営利団体にタクシー運賃の半額程度で認められている=佐賀市
佐賀新聞-2012年10月23日更新